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秋刀魚と贅沢モルツ(SAPPORO)、福沢諭吉の禁酒

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◇初物をいただく
(学問以外の)仕事を終え、家に帰ると午前1時前。それから、飯を食べるわけですが、といっても総菜だけですけど、本日は、サンマの塩焼きでした。先週あたりから、秋の味覚として、店先に並ぶようになりましたが、今年は豊漁で安くなっています。脂ののった秋の秋刀魚は最高です。焼いてから数時間たったものですけど、レンジでチンして、大根おろしと絞ったスダチで味わいましたが、やはり季節の味覚、芳情で濃厚な舌触りでした。ちなみに日本が誇る名匠小津安二郎も晩年に『秋刀魚の味』(1962松竹)という作品を撮っていますが、興味ある方は是非。ちなみに平蔵は小津安二郎大好きです。
そういう秋刀魚のお供には、やはり秋期限定ビールが似合います。秋季限定モノのビールは、レギュラーアイテムより、麦芽使用率を高め、その分アルコール度数も高くなりますが、濃厚な味わいになっています。これは、夏場は、量を飲むためのビールでしたが、秋口にかけては、量は飲めないけど、濃厚な豊潤な味わいを極めたい!という民需と供給側の思惑の一致から、そうした限定ビールが出されているそうです。本日の相棒は、SAPPORO贅沢モルツです。


◇禁酒する福沢諭吉
そういふ飯と酒の噺ばかり書いていると宇治家参去さんは、酒のみでこの日記も酒飲み日記になっているぞ、との御批評もでてくるかと思いますが、確かにそうです。
ですけど、それだけに終わらせてしまうと意味がないので、一ついい話を。
私の大尊敬する日本人の一人に福沢諭吉がいます。福沢といえば、明治日本を代表する啓蒙思想家であり、一万円札の人物として知られていますが、現実にはちまたではその業績や活動が知られていないのが実情だと思います。アカデミズムの世界でも、一般的には福沢の啓蒙思想家としての側面は評価されても、その思想性はほとんどないと評価されるのが常ですが、そうでもないよなーと思うしだいです。そう思うのは宇治家ばかりではなく、かの、戦後日本を代表する思想家・丸山真男大先生も、一定の距離をおいていますが、福沢を評価しております(丸山の福沢評価に関しては、手短なところで、丸山 真男(松沢弘陽編)『福沢諭吉の哲学』(岩波文庫、2001年)。丸山真男の福沢論に関しては、また別のところでふれようと思いますが、実は、福沢諭吉大先生は、無類の大酒のみだったんですね。

福沢の自伝にあたる『福翁自伝』にもつぎのようなくだりがあります(引用は、福沢諭吉(富田正文校訂)『福翁自伝』(岩波文庫、1978年))。

「(泥酔して巷に迷惑をかけたため福沢は禁酒します--引用者注)また私は酒のために生涯の大損をして、その損害は今日までも身に付いているというその次第は、緒方の塾に学問修業しながら、兎角(とかく)酒を飲んで宜いことは少しもない。これは済まぬことだと思い、あたかも一念ここに発起したように断然酒を止めた。スルト塾中の大評判ではない大笑いで「ヤア福沢が昨日から禁酒した。コリャ面白い、コリャ可笑しい。いつまで続くだろう。迚(とて)も十日は持てまい。三日禁酒でも明日は飲むに違いない」

ですけど、福沢は頑張って禁酒を十日、十五日と続けます。そうすると悪友が曰く、

「キミの辛抱はエライ。よくも続く。見上げてやるぞ。ところが凡(およ)そ人間の習慣は、仮令(たと)い悪いことでも頓(とみ)に禁ずることは宜しくない。到底出来ないことだから。君がいよいよ禁酒と決心したらば、酒の代わりにたばこを始めろ。何か一方に楽しみがなくては叶わぬ」

と、親切らしくいうわけです。福沢は煙草が大嫌いで、その害悪を説いて回る人物でしたが、「忌(いや)な煙を無理に吹かして、十日も十五日もそろそろ慣らしている中に、臭い辛いものが自然に臭くも辛くもなく、だんだん風味が善くなって来た」となるわけです。

しかし問題は酒です。

「凡そ一ヶ月ばかり経って本当の喫煙客(タバコノミ)になった。ところが例の酒だ。何としても忘れられない。卑怯とは知りながら、一寸(ちよい)と一盃やってみると堪らない。モウ一盃、これでおしまいと力んでも、徳利を振ってみて音がすれば我慢ができない。とうとう三合の酒をみな飲んでしまって、また翌日は五合飲む。五合三合従前(モト)の通りになって、さらば煙草の方はのまぬむかしの通りにしようとしても、これも出来ず、馬鹿々々しいとも何とも訳が分からない。迚も叶わぬ禁酒の発心、一ヶ月の大馬鹿をして酒と煙草の両刀遣いに成り果て、六十余歳の今年に至るまで、酒は自然に禁じたけれども、煙草は止みそうにもせず、衛生のために自ら作(な)せる損害と申して一言の弁解はありません」。

とのことだそうです。
福沢は自伝だけでなく、その書き物を読むと人間味あふれる人です。福沢の大酒飲みの噺は有名だそうですが、酒を禁酒しようとして結局嫌いな煙草にまで手を染め、欠かせなくなったというエピソードは、その証左だと思います。
そういえば、大学の学部生時代(慶應義塾)、大学の授業の休講などを知らせる掲示板には、教授であろうと「○○君」と記名されていました。これは、慶應義塾にとっては、先生と呼ぶべき対象は、創立者の「福沢諭吉」ただ一人で、その以外の教員は、同等に「~君」で読んでいたものの名残だと聞いたことがあります。現在においては、もちろん形骸化した部分もあると思いますが、それだけみんなから慕われていた人間・福沢を感じさせるエピソードだと思います。

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