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上橋菜穂子『精霊の守り人』(新潮文庫)読了する

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どうも宇治家参去です。

 土曜の夕方は大学で研修でした。
 到着が18時前。もはや真っ暗ですが、ちょうど秋期スクーリングを終えた学生さん達の帰宅時間。八王子駅行きのバス停は大混雑。
正門でおりたので、本部棟へいくのは真逆で遠いのですが、ちょうど、正門では、菊の展覧会をやっており、その美しさに疲れが吹き飛びます。

 慣習的に国花と同等の扱いを受けるのが、この菊と桜ですが、またまた酒の話で恐縮ですが、確か春の園遊会には、「桜正宗」、秋の園遊会には「菊正宗」が指定されているとかされていないとか聴いたことがありますが、秋に満開を迎える菊は恐ろしく美しいですね。

 研修は30分程度おわり、そのまま市井の仕事へ直行し、なんとかこなし、ようやく家で一杯です。菊正宗を飲みたいところですが、今日は「一の蔵」でした。火を入れるのがめんどうなので、冷や奴でやりましょうかね。ショウガをすり下ろして。

 さて10/30の日記に記した上橋菜穂子さんの作品ですが、結局ブックオフでゲットできたのは、野間児童文芸賞新人賞を受賞した『精霊の守り人』(新潮文庫、平成19年)でした。いわゆる『守り人』シリーズの巻頭をかざる一冊で、独自の異世界を舞台にした女用心棒を主人公にしたハイ・ファンタジー作品といわれています。

 「バルサ(引用者注--本書の女主人公)が鳥影橋を渡っていたとき、皇族の行列が、ちょうど一本上流の、山影橋にさしかかっていたことが、バルサの運命を変えた。」

 ちょうど冒頭の部分です。運命の転変を地の文で表現する作品は、諸刃の刃で難しい書き方だと思うのですが、この物語はすんなりすすんでいくといいますか、読み手を熱中させる一冊です。ちょうど大学への往復の間に読んでしまったので、正直いって「面白い」一冊です。あまり期待してなかった部分もあったのですが、話の変化の付け方(ストーリー転変)、ディテールと女性の描き方がうまい。

 著書はアボリジニを専門とする文化人類学の研究者で知られるが、そういえば『ゲド戦記』を書いたル=グィンの両親も文化人類学者だった。そして、ファンタジー小説の大家としてC・S・ルイスやトールキンがどちらも文学や言語学の学者であったことを考える合わせると、そこには、世界の秩序を自分なりの言葉で表現したい、解明したいという強い動機を感じさせられるが、上橋菜穂子さんの作品もそうした“臭い”が濃厚だ。

 その意味で、読み捨て御免の亜流ファンタジーとは一線を画した、
 (本物の作品)
 であることは保障できます。

 興味のある方は是非。

 宇治家さんもその足で再びブックオフへ向かい、第二弾の『闇の守り人』(新潮文庫、平成19年)を早速入手したので、一の蔵でも飲みつつ、秋の夜長をたのしもうと思います。

 最後に……

 人というのは、つくづくくだらないものだ、とシュガは思った。天の理(ことわり)を知ることを一生の仕事に選んだはずの人びとが、出世の階段を駆け上がっているシュガへのねたみで身をこがしている。逆の立場だったら、自分もああいう顔をするのだろうか、と、シュガは自分に問うてみた。--そんなことはしないだろう、と思う反面、いや、やはり、ひどくねたむだろう、とも思われた。
    --上橋菜穂子『精霊の守り人』(新潮文庫、平成19年)。

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コメント

TBさせていただきました。

評判どおりで、すごくよかったです。
東洋的な身近に感じられる世界感で、物語にのめり込みやすかったです。

投稿: タウム | 2007年12月29日 (土) 10時35分

はじめまして、タウムさん、書き込みありがとうございます。

上橋さんの描写は、過分に東洋を美化するでもなく、そのありのままを描いているところが面白いです、おそらく本業(?)のアボリジニ研究の影響かと思いますが、文化に対する等分な視線と描写に絶望です。
続編の『闇の守人』(新潮文庫)もよかったです。ぜひ続けていかれると感動もひとしおだと思います。

投稿: 宇治家参去 | 2007年12月31日 (月) 02時31分

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