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ガンバリ・ニンドー・オト・ト・ギス

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 田舎の噺三つ

 一
 これはたしかお梅さんが、わたしに話してくれたのだと思う。
 『狢(むじな)という奴はたちが悪くて、特に田舎の、人里離れた民家に好んで忍び込みます。世帯道具の--主として鍋の形に化けて。
 たいていの人がその鍋を使うわけですが、しかしそれで何かを煮ようとすると、それはまたもとの狢になり、しかめ面して逃げてゆきます。--そのとき、中に入っていた水は火の上にこぼれ、火を消してしまいます』

 二
 これを、最初わたしは、日本に関する非常に注目すべき、しかもあまり知られていないある書物で読んだのである。その後、実際にそれが田舎の人達の信念であることを確め得た。
 『新年の夜、人里離れた場所で、Gambari-nindo oto-to-ghicou !(ガンバリ・ニンドー・オト・ト・ギス)(意味不明)と唱えさえすれば、すぐさま暗闇の中に毛むくじゃらな手のニュッと現れるのが見える』

 三
 同じ書物で拾った噺。
 『毎年冬のある晩に、猫たちは人里離れたどこかの庭で一大集会を催し、最後に月明かりの下でみんな揃って輪舞(ロンド)を踊る』
 それから次のようなすばらしい会則が眼にふれた。わたしはこれをジュール・ルメートルや、その他、猫の魅力のわかるほど充分に洗練されたあらゆる人々の高覧に供しよう。
 --本会ニ入会セントスルニハ、イカナル猫モ、踊ルトキ被ル絹ノねっかちーふ乃至はんかちーふヲ入手スル義務アリ。
    --ピエール・ロチ(村上菊一郎・吉氷清訳)『秋の日本』(角川文庫、昭和28年)。

 ピエール・ロチは、フランス海軍の軍人で、1885年(明治18)に来日、そのときの滞日印象録が『秋の日本』です。
明治維新から18年--。当時の日本は、江戸の面影を色濃く残しております。しかしその一方で怒濤のごとく押し寄せた西洋文明が定着しつつある--そうした情景を豊かな筆致で描いております。

「この日本という国は、千五百年乃至二千年の伝統を墨守しながら、しかも突然、眩暈のように彼を襲ったところの近代的な事物にも心酔して、いかにもちぐはぐな、木に竹をついだような、本当とは思えない国である」(同前)

別に日本文化が最高!という形で古来の伝統を賞賛したり、西洋文明が最高!とその逆に舶来品を手放しで歓迎するわけではありませんが、こと異文化受容に関しては、どうもこの国は、「ちぐはぐな」受容を続けていると思わざるを得ません。

どうも「ちぐはぐ」なんですよねぇ。

さて、市井の仕事が24時に終了し、家路を急ぐと、空から雪が降り出しました。
東京では初雪でしょうか--。
ロチの噺にでてくる猫ではありませんが、外で暮らすいきものたちは、“輪舞”でも踊らないと寒くてたまりませんね。

久しぶりに体がガチガチ震えた厳冬のひとときです。

個人的には、積もってほしいですね。
何故って?

それは風流だからですよ。

Pierreloti263x400

Loti_1

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