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渋滞なく日常を歩む

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今日は、市井の仕事が18時出勤のため、昼過ぎから、通信教育部のレポート添削と採点を行う。今月より、初めてレポート業務を行うようになり、本日の添削及び採点が初回となります。詳しい報告は後日紹介しますが、半分まで済んだところで、息子さんが仕事部屋へ乱入……。

「コーパー、コーパー」

不気味な呼吸音がこだまするので振り返ると、先日もらったダースベイダーのマスクを被っている。半月ほどまえ、市井の職場の大掃除の際出てきた代物で、店長から持って帰ってもいいよって言われてましたので、貰ってきたマスクです。胸のところのBOXを押すと、ご存じの呼吸音や名(?)セリフが再生され、マスク内に装着されたマイクも使用できるちょっとした本格派。

最初、息子に見せたときは、怖がっていたので(彼曰く「黒鬼」とのこと)、ヤフオクで売っ払おうと思っていたのですが、最近では、馴れてきたのか……被るようになっていた。
添削するペンの手を休め、ひととき、息子と戯れる。

そんな長い時間ではありませんが、こうした営みが滞りなく享受できれば、人生においての難問はそれほど残っていないのかもしれません。

 「平八郎。これからはむやみにうごくなよ。わしが案ずるに、徳山五兵衛殿や山本の師匠(おやじ)は、お前の将来(ゆくすえ)についてもよくよく考えていてくれるのじゃと思う。お前の、その若いちからをもって世のためにはたらくことは不可能ではないのじゃ。かまえて京からうごいてはならぬ」
 「はい」
 「それが、もっとも早く江戸におられる母御と会える道につながるのじゃと思え」
 老和尚に、そういわれると、一言もない。
 「わしもな、若いころは僧門にあきたらず、坊主あたまに鉢巻をしめて剣術修行なぞをしたものじゃが……なあに、いまとなって見れば、人間の生くる世界というものは上も下も、それほどの変りがないものよ」
 「はあ……」
 良栄和尚は、平八郎の方をなでさするようにしながら、あたたかい微笑みを投げてよこし、
 「人はな、平八郎」
 「は……?」
 「人というものは、物を食べ、眠り、かぐわしくもやわらかな女体を抱き、そして子をもうけ、親となる……つまり、そうしたことが渋滞なく享受出来得れば、もうそれでよいのじゃ。しかし、それがなかなかにむずかしい。むずかしいがゆえに世の騒ぎが絶えぬ」
 「…………」
 「何じゃ。物足りぬ顔つきじゃな。ま、よろしい。若いころは何事につけても物足りぬものよ」
    --池波正太郎『さむらい劇場』(新潮文庫、昭和五十七年)。

しかし、こうしたところが実は一番難しいのかもしれません。男性たちはともすれば、小事を大切にせず、小事と遊離した天下国家を論じることに血眼になりがちです。でもその議論は、小事と遊離しているゆえに、単なる空理空論に終わり、論じていたとしても、それは単なる前進への展望ではなく、現状に対する不満への鬱憤晴らしで終わっているような感があります。
そうしたところで比べてみれば、実に、女性の議論はすっきりしている。すなわち、月並みな言い方ですが、台所から世界を見て、そして論じているからなのだと思います。

難しいのですが、小事を渋滞なく享受することを心がけ、小事と大事の両者を両眼で見て、議論できるようにしたいものです。

でもひょっとすると、そのことは、自分で難しいと思っているだけで、実は、自然体でふつうに歩める正道かもしれませんね。

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