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【覚え書】壊れるほど頑張る必要はない 石田衣良さん(作家)」

存在自体は知っていたが、読んだことがないのが、石田衣良。
ちょうど、新聞にインタビューが載っていたので、覚え書まで。

■「第4回 壊れるほど頑張る必要はない 石田衣良さん(作家)」、『読売新聞』(2008年1月11日付)

 僕は、受験勉強が本当に嫌いだったのでしなかったんですよ。どこか受かれば行けばいいし、だめだったら行かなくてもいいやと思っていたんです。新卒の時の採用試験も蹴ってしまったし。高校は東京・下町の進学校で、ほとんど全員が受験勉強をしていましたが、僕はもう嫌になっちゃったんだよね。学校もなんかおもしろくないなあという感じで、好きな本だけ読んで暮らしていたんです。

 高3の夏は1日に2.8冊読みました。これが最多記録です。1000本ノックみたいなもので、一度小説の中におぼれてみないと、小説の形みたいなものが身につかないんです。形がないと崩したり、自分なりに新しいスタイルを作ったりできない。目が良くて時間があって若いときにたくさんの本を読んだことは、役に立ちました。

 共通一次と成蹊大学、もう1カ所受けたと思います。共通一次は初年度でした。数学や物理は反復練習をしていないからだめ。世界史は覚えるのが嫌で勉強しなかった。だから、英語と国語で受かるところしかだめだった。英語は好きで、欧米ポップスの歌詞をたくさん覚えていましたから、学校の勉強はあまりしなくて済んだんです。

 試験の前の日もテレビで映画を見ていました。当時はVTRがなかったので、ここで見なかったら次にいつ放送するか分からない。そう思ったら、とりあえず黒澤明でしょう。勉強よりおもしろいし。焦りはありましたが、20代の10年くらいは棒にふってもいいと腹をくくっていたんだと思います。なるべく広く世の中を見て、本当におもしろいことが見つかったら、ちゃんと取り組めばいい。

 今度出した本「5年3組リョウタ組」は、7割が中学受験をする小学校が舞台なんですが、行きたくもない塾にみんなが行かなきゃならない。ちょっとかわいそうですね。勉強が得意じゃない子は、そんなにやらなくてもいいんじゃないかと思います。そのためには、社会に「迂回路」をもっと作ることが大事ですよね。ちゃんと勉強して、一流の大学に入って、いい会社に入るというのではなく、もっと別の生き方ができるように。

 作中で「勉強はできないけど『共感力』がある」と言われる学級を描いたんですが、共感も行き過ぎると怖いよね。今の日本で生き残るために一番有利な力は「空気を読む力」ですよ。でも、その場の空気はゆれ続けます。決まった座標軸のないところで、空気を読むことを強要されながら大人になるのは、ものすごく大変だろうと思います。

 受験に落ちても死なないし、自分の力のすべてが測られるわけでもない。自分が壊れるほど頑張る必要はないよ。学力と、その人の本当の知力はまったく別のものだからね。でも、受験が終わったらちゃんと自分のための勉強を一生やるように。社会に出てから勉強したことは本当に役に立ちますよね。

◇いしだ・いら 1960年生まれ。成蹊大経済学部卒。広告制作会社勤務を経て作家に。2003年「4TEEN」で直木賞受賞。「池袋ウエストゲートパーク」シリーズや恋愛小説「眠れぬ真珠」などで多くの年代から支持されている。最新作「5年3組リョウタ組」が11日に発売。

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