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こんなことをされると、むかしのままだな

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 火付盗賊改方の長官(おかしら)・長谷川平蔵宣以は、その生いたちが生いたちだけに、
 「四十をこえてみて、わしは、その二倍も三倍もの年月を生きて来たようにおもえる。さればさ、もう生きているのが億劫になった」
 と、妻女の久栄に、よく語りもらすことがある。
 つまり、それだけ多彩な人生を体験してきたからであろうが、いまになってみると平蔵、つくづくとこうおもうのである。
 (つまりは、人間(ひと)というもの、生きて行くにもっとも大事のことは……たとえば、今朝の飯のうまさはどうだったとか、今日はひとつ、なんとか暇を見つけて、半刻か一刻を、ぶらりとおのれの好きな場所へ出かけ、好きな食物(もの)でも食べ、ぼんやりと酒など酌みながら……さて、今日の夕餉には何を食おうかなどと、そのようなことを考え、夜は一合の寝酒をのんびりとのみ、疲れた躰を床に伸ばして、無心にねむりこける。このことにつきるな)
 若いころ、義母に勘当同然のあつかいをうけて、無頼の仲間へ入り、父のいる屋敷へも帰らず、やれ〔本所の鬼銕〕だとか〔入江町の銕〕だとか評判され、のむ打つ買うの三拍子に明け暮れたこともある平蔵だが、いまは公儀御役目によって悪党どもを取締まるため、ろくに正月の雑煮も落ちついて祝えぬ身となってしまった。
 それは〔泥鰌の和助〕事件が片づいてから十余日を経た或日のことであったが……。
 長谷川平蔵は深川から本所を単独で巡回し、日暮れてから、本所二ツ目の軍鶏鍋屋〔五鉄〕へおもむき、昔なじみの密偵・相模の彦十やおまさ、それに五鉄の亭主の三次郎をまじえて酒になり、昔がたりに時をすごすうち、雪が降り出してきた。
 この夜。平蔵はめずらしく興に乗り、一升ほどの酒をのんでしまい、清水門外の役宅へ帰るのがめんどうになってきて、
 「彦や。今夜はここに泊まる。何かあるといかぬから、お前はすまねえが役宅へ知らせておいてくれ」
 いうや、二階の、女密偵・おまさが寝泊まりしている部屋へあがりこみ。ねむりこけてしまった。
 夜半に、おまさがそっと入って来て、掻巻(かいまき)を直してくれたことを平蔵はおぼえている。
 そしてまた、ぐっすりとねむった。
 目ざめたときは、もう五ツ(午前八時)をまわっていて、窓障子に陽射しが明るかった。
 (昨夜の雪はつもらなかったか……)
 平蔵には、そのことがさびしく感じられた。
 おまさは、朝早くから例の小間物行商の風体で、市中をまわりに出て行ったという。
 顔を洗った平蔵へ、五鉄の亭主・三次郎が茶わんに冷酒をくんで出した。
 苦笑した平蔵が、
 「こんなことをされると、むかしのままだな」
 「もうじき、三十年でございますぜ。むかしは私の死んだおやじが、あなたさまへ、こうしたもので」
 「あなたさまはねえだろう」
 このあたりへ来ると、平蔵は若いころの気分になってくるのを、どうしようもない。年をとればとるほどに、そうなってくるのである。
    --池波正太郎「寒月六間堀」、『鬼平犯科帳(七)』(文春文庫、2002年)。

どうも、宇治家参去です。
劇中の長谷川平蔵の青春は本所にありましたが、宇治家参去の学生時代の青春は、江ノ島~熱海~伊東にあってよかったと思います。季節に一度は、気心の知れた仲間と遠出して、ぶらぶらあてどもなく酒を飲みながら、経巡り歩いたものです。

さて、今日は(もう昨日ですが)、子供のために、以前より計画していた、新・江ノ島水族館ツアーです。
家族同様のおつきあいをしている、うちの隣の老夫婦と一緒に出発しました(すべて出して頂き感謝です)。

さて、劇中の平蔵ではありませんが、ロマンスカーで一杯、江ノ島で一杯、水族館で一杯、帰りのロマンスカーで一杯、地元へ戻って一杯の一日でした(ビールだけですが)。

子供も楽しみ、老夫妻も楽しみ、妻も楽しんでいたのがなによりです。

ただ疲れました。

今日は、ビールしか呑んでいないので、日本酒で締めてこれから再度寝ます。

おやすみなさい。

大事なことを忘れていました。

①生しらす最高です。
②新江ノ島水族館のイルカ・ショーは必見です。
※イルカ・ショーといえば、きびきびした係員のホイッスルの指示で、イルカが跳んだり跳ねたりする“見世物”を想像しがちですが、そうした先入観を打破してくれます。
ひとつのミュージカル仕立てのイルカ・ショーになっています。係員のお姉さんが謳いながら、イルカと一緒にミュージカルです。そこには、無粋なホイッスルもかけ声もありません。

まさに必見です。

とはいえ、一日中呑んだ一日でした。
若い頃を思い出し、ひとときのノスタルジアと現在の対話ができたひとときです。

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