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苦闘を無駄と呼んではならぬ / ‘Say not the struggle nought availeth’

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六月二十三日。

我が子が五歳になった。ちょうど、織田信長と同じ誕生日だ。
織田信長なんかにならなくてもよい。

人間と、そして人間の住まう世界を自分から手放さない人間になってほしい。
五濁悪世が人の世の常である。嘆いてもはじまらない。
今、君の踏み立っている大地だけが大地である。しかし天空には星々がきらめき、無限へと誘う。
大地が美しければ、天空も美しいように、大地に踏み立ち天空を仰ぎ見る君の姿も美しい。
そして、君と視線を交わしあわせるほかの人の姿も美しい。

貧乏な父さんは君に何もあげないよ。
なぜなら母さんからもらっているから。

そして間抜けな父さんは何も教えることは出来ない。だから、一つの詩を贈ろう。

読めるようになったときに読めばよい。

君のうまれた日にもあじさいがさいていたよ。
あじさいは雨に濡れた姿が一番美しいんだよ。
人間もおなじだよ、苦闘を無駄と叫んではいけないよ。

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苦闘を無駄と呼んではならぬ
     アーサー・ヒュー・クラフ

悪戦苦闘しても無駄だ、
  骨折り損だし、怪我をするだけだ、
敵は一向に怯(ひる)まないし、逃げる気配もない、
  結局元の木阿弥だ、などと言ってはならない。

希望を抱いて馬鹿をみるなら、心配が杞憂(きゆう)に終わることもある。
  もしかしたら、ここからは見えない戦場の一隅で、
まさに今、君の戦友が逃げる敵を追っているかもしれない、
  君さえいなければ、勝利は味方のものかもしれないのだ。

疲れきった様子で浜辺にうち寄せている波も、
  いくら苦労しても一歩も前進してはいないように見える。
それでも、ずっと彼方の湾や入江では、じわじわと、
  そして、黙々と、大きな潮がみちかけているのだ。

夜明けの時にしても、東側の窓からだけ、
  光が射してくるのではない。
東の空に太陽が昇るのが、どんなに遅々としていても、
  西の方を見るがいい、天地はもう明るくなっているのだ。

‘Say not the struggle nought availeth’
     Arthur Hugh Clough

Say not the struggle nought availeth,
    The Labour and the wounds are vain,
The enermy faints not, nor faileth,
    And as things have been, things remain.

If hopes were dupes, fears may be liars;
    It may be, in you smoke concealed,
Your comrades chase e'en now the fliers,
    And, but for you, possess the field.

For while the tired waves, vainly breaking,
    Seem here no painful inch to gain,
Far back through creeks and inlets making
    Came, silent, flooding in, the main,

And not by eastern windows only,
    When daylight comes, comes in the light,
In front the sun climbs slow, how slowly,
    But westward, look, the land is bright.
    --平井正穂編『イギリス名詩選』(岩波文庫、1990年)。

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コメント

Comes, silent, flooding in, the main.
が正しいようです。

投稿: | 2017年6月 4日 (日) 10時29分

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