【覚え書】「風知草:「田母神支持58%」考=専門編集委員・山田孝男」、『毎日新聞』2008年11月17日(月)付。
ちょゐ首をやってしまい、痛くて首が動かない、すなわち、頭が回らないのですが、忘れてはいかんと思い、【覚え書】ということで……。
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風知草:「田母神支持58%」考=専門編集委員・山田孝男
先週、国会の参考人質疑を傍聴して最も印象に残った前航空幕僚長のセリフは「ヤフーの質問(=投票)で58%が私を支持している」だった。
インターネット上のアンケートなど客観性がないと笑うのは簡単だが、いくらたたかれても田母神(たもがみ)コールが沸き起こるのが現実だ。このモヤモヤを払うためには、何が誤りでどこは擁護されるべきかを明確にしなければならない。
「日本は侵略国家であったのか」と題する田母神論文は400字詰め原稿用紙で18枚。冒頭から15枚目までは、近現代の戦争に関し、日本は常に攻撃的意図を持たず、万事はソ連共産党と中国共産党の謀略にはめられたのだという主張であり、論拠はいずれも近刊のノンフィクション(二次資料)だ。
これに対し、朝日新聞、毎日新聞から週刊新潮まで多くのメディアに登場して共産党謀略説を否定してみせたのが現代史家の秦郁彦(はたいくひこ)(75)である。当事者からの聞き取りや原資料の確認を重視する実証的な軍事史研究の第一人者だ。
田母神俊雄が共産党の工作だと論じているのは、1928年の張作霖(ちょうさくりん)(中国の軍閥政治家)爆殺事件、日中全面衝突の契機となった37年の盧溝橋(ろこうきょう)事件と41年の日米開戦である。
秦の批判は「張作霖爆殺事件の再考察」(07年5月、日大法学部紀要「政経研究」)「盧溝橋事件の研究」(96年、東大出版会)「検証・真珠湾の謎と真実」(01年、PHP研究所)に詳しい。いずれも実証主義に徹した労作だが、問題は、どれだけ精密に反論されても、田母神とその支持者は絶対に屈しないということだ。
なぜか。田母神論文には、わずかながら、もっともな主張が含まれている。
結論の「集団的自衛権(同盟国を攻撃した国に対して応戦する権利)を行使できず、武器使用の制約が多く、(相手のミサイル基地をたたく)攻撃的兵器の保有も禁じられている現状では自力で国を守れない」というくだりである。
この一念で問題を提起した以上、歴史論争に負けて引っ込むわけにはいかないというのが田母神の心境だろう。
自衛隊の国際平和協力業務定着に伴い、武器使用の制約をめぐる矛盾は拡大している。集団的自衛権、まして攻撃的兵器は議論の余地が大きいが、安倍晋三がアクセルを踏み、福田康夫がブレーキをかけ、安全保障政策は漂流中だ。
折も折、世界の軍事・経済を牛耳ってきた米国のパワーが落ち、本能的に対米依存脱却=自立の必要を感得した民衆が、理屈を度外視して田母神論文に反応しているというのが私の現状理解である。
田母神論文は俗説を継ぎはぎした論外の駄作だ。駄作に300万円与えた企業は恐縮するどころか、英訳を出版して世界に発信するという。
それを呆然(ぼうぜん)と見守るのではなく、何が誤りかを明確に指摘するのが政治家の役割だと思うが、そうなっていない。役人の事なかれ主義に引きずられ、前空幕長を定年退職扱いにして更迭の意味をぼかした。
政治家と役人だけが悪いとは言わない。メディアは田母神批判を競っているが、その矛先は集中と確信を欠く。田母神の言動を大ざっぱに全否定してもネット上の田母神支持を増やすだけだ。歴史問題を確かに論じ、安保政策を不断に議論する必要がある。(敬称略)
http://mainichi.jp/select/seiji/fuchisou/news/20081117ddm002070072000c.html
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蛇足ですが、論文そのものは以下のURLにPDF形式で掲載されております。
(和文)http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu.pdf
(英文)http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu_english.pdf
しかしなあ~、自分も300万円欲しいです。
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