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「柚子だけは贅沢をさせてくれ」

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 冬が来て、一年が終わろうとするころ、日本の味覚のゆたかさは、まさにクライマックスを迎えることになる。
 魚では鮪、河豚、蟹、鰤、鮟鱇、寒鮒、鱈、鮃。
 野菜も、白菜、大根、人参、小松菜、それに上方ではエビ芋が出まわってくる。
 鮨屋も料理屋も活気がみなぎってくるし、家庭でも、この季節に、
 「今晩のオカズ、何にしようかかしら?」
 などという主婦は、落第ということになる。
 寒くなってきて、魚介の保存もきくようになり、したがって家庭料理の種目も増える。
 鮪の刺身が残ったとき、これを山葵醤油に一晩漬けておき、翌朝(といっても、私の第一食は昼ごろになる)の食卓に焜炉の網で焙りながら、熱い飯といっしょに食べるのは私のたのしみだ。
 このために、わざと鮪を残しておく。山葵醤油の山葵も、このときは、むしろ粉山葵をたっぷりと使ったほうがよい。
 濃くいれた煎茶へ塩をひとつまみ落し、吸物がわりにする。
 これに大根の漬物をきざみ、柚子をかけまわしたものであれば文句はない。
 柚子も秋の青柚が熟し切って黄色くなり、その酸味と芳香は私にとって欠かせないものとなる。
 いまは柚子も高くなってしまったが、
 「柚子だけは贅沢をさせてくれ」
 と、たのんでおき、毎食、魚介や漬物にかけてはたのしむ。
    --池波正太郎『味と映画の歳時記』新潮文庫、昭和六十一年。

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どうやら、昨日より風邪を引いたようで、熱がさがらず、今日は一日中ふとんの住人になってしまいました。半月ぶりの家族での食卓ということで、鍋を仕立ててくれたものの、柚子の味しかわかりません。

豆腐のあつさはおぼえているのですが……。

もういちど、寝ます。

みなさまも風邪には気をつけなさりますように。

仕事なんかで、バイト君なんかが、「今日は風邪で休ませてください」などと連絡をもらうと、「風邪ぐらいで休むなよ!」って思うのですが、これはなったものにしかわかりませんが、相手からは軽くあしらわれてしまうものですね。

不思議なところです。

夕凪の瀬戸のように微睡んでおりますが、一杯飲んで温めてから寝ます。
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Book 味と映画の歳時記 (新潮文庫)

著者:池波 正太郎
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