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常難の日々

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 私たちは関係について思惟するのではなく関係するのである。ことは内在的瞑想ではなく、行動に係わる。世界の不浄性--旧約聖書がその所与のすべてとともに受けとめているのはこれである--のなかにおいてこそ、聖潔は築かれる。然り、聖潔は築かれる。聖潔とは行動である。世界の贖いは存在しない。世界の変革が存在するのである。自分自身の贖いはすでにして行動である。内在的悔悛とは論理矛盾である。受苦には魔術的効果などありはしない。受苦する価値があるのは、彼が受苦しているからではなく、苦難に耐えて昂然と頭を上げている彼の正義のゆえにである。受苦も死も人間の受難を表現する語であるが生とは受難ではない。生とは行為である。生は歴史のなかにある。
 ここで言う歴史は罪からではなく、人間の創造から始まる。完全なる存在のパラドクスは、自分以外に自分と等格のものを望んだこと、つまりは存在の多様性を、したがって内在性を超える行動を望んだことに存するのである。ここにおいて神は創造それ自体を超越したのである。ここにおいて神は「自らを空とした」のである。神はこうして話しかける相手を創造したのである。
    --E.レヴィナス(内田樹訳)「シモーヌ・ヴェーユ、反聖書」、『困難な自由 --ユダヤ教についての試論-- 』国文社、1985年。

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元旦に細君がなにやら、決意とか目標をしたためていたのですが、今日、よく見てみると、私の目標のところ--「大学での常勤」と書かれております。

いまのところ、何のアテもありませんが、ひとまず論文の提出の先に見えてくる当面の山がその目標ということになるのですが、その書かれた紙をよく見てみると「字」が間違っている。

すなわち、「常“難”」と最初は書かれていたようで、上から斜線を引いて「常“勤”」と書き改められていたようでした。

そこで、「字が間違っているけど、全部書き直した方がよくない?」とやぶへびをしてしまいますと、「そういう人が直せばいい」ということで案件がクローズです。

で……
「常難とは上手いことをいうねえ」と細君にふると、

「常難のような人生ですからねえ」

なるほど……。

しかし、自分としては、まずもって今の境涯を甘受することは決してできませんが、それと同時に大変で苦しい状況ですが、「苦しい!助けてくれ!」というような悲壮感のようなものは不思議なことですが決してありません。と同時に楽天的なところもありません(「楽観」ではなく「楽天」)。

「受苦には魔術的効果などありはしない」ので、苦しみに酔って、耐え忍ぶ義人を演ずることもありません。

そして……現状を甘受せず、そして苦しみに酔わず、昂然と進む中で苦難が意味あるものになるのでしょう。

ちょうど、レヴィナス(Emmanuel Lévinas,1906-1995)が、受苦の歩みを決して辞めなかったシモーヌ・ヴェーユ(Simone Weil,1909-1943)のことを書いている文章を読んでいたところでしたので、今日は「常難」という言葉に引っかかった宇治家参去です。

レヴィナスの人生は、ユダヤ人の歴史と同じく「受苦の歴史」であったといってよいのですが、それだからこそ、彼の言葉は肺腑から出てきた迫力と輝きがあるのでしょう。

痛みは痛みとして引き受けながらも、現状にたゆみなく働きかける。
痛みに酔わないようにしながら、痛みは常に存在することを把握する。
そのすがたこそ、「受苦しているからではなく、苦難に耐えて昂然と頭を上げている」人間なのでしょう。

「受苦も死も人間の受難を表現する語であるが生とは受難ではない。生とは行為である。生は歴史のなかにある」。

ただ、歩きながら、このことを恬淡とした素の歩みのなかで実践したいものです。

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