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【覚え書】「〔オピニオン〕インタビュー急接近 米国の新聞はどこで間違ったのですか ノンフィクション作家 ゲイ・タリーズさん(77)」、『毎日新聞』2009年04月03日(金)付。

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あらゆる制度や概念、仕組みやシステムはそもそも生きてゐる人間の為にデザインされたはずなので、あらためて「人間のために」とか「人間主義的な」という形容詞をつける必要もなかったのだと思います。

しかし、それが加速度的に進展するなかで、原初の意味を見失い、わざわざと「人間のために」とか「人間主義的な」という接頭語をつけないと、本来の役目に戻れないとあればこれは不幸といわざるを得ません。

原初の意味に戻るならば“人間のための”経済学とかなどという表現は不必要なのでしょう。そうしたことを考えさせるインタビューがあったのでひとつ【覚え書】として残しておきます。

ハイテクが社会を劣化させたわけではありません。
人間世界の事象に関しては、「自ら歩き直接」話をきき、ゆっくりと関係をつくっていくしかないのでしょう。

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ハイテクは報道を殺す毒

 --米国の新聞が、厳しい経営を強いられています。
 ◆かつて勝ち得ていた読者の信頼を、新聞が失ったのだと思う。確かに一部の記者は素晴らしい仕事をしている。しかし速報性を追求し過ぎ、インターネットに頼ることで米国の新聞報道は大きな問題を抱えるようになった。
 --具体的には。
 ◆テレビやインターネットは24時間、新しいニュースを流し続ける。新聞がそうしたメディアと速報性を競ってどれほど意味があるのか。米国の新聞社はこの点で勘違いをしている。新聞が売らねばならないのは信頼と正確性だ。記者は自分の書くものが歴史の記録であることを意識すべきだ。テレビやインターネットの情報をもとに書く記者が増えていることを懸念する。ハイテクはジャーナリズムを殺す毒だ。記者は「歩兵」であり、自ら歩き直接、聞いた話を書くべきだ。今は、部屋の中でラップトップとにらめっこしている記者が多い。
 --イラク戦争報道でも、米国の新聞は間違いました。
 ◆あの戦争は、政府がいかにして新聞を腐敗させるかを示した。大統領や副大統領、国防長官のうそを、ニューヨーク・タイムズ紙でさえ、そのまま報じた。01年以降の米国のジャーナリズムの質は、私が知る限り最悪だ。
 私は、これまで新聞記者としてもノンフィクション作家としても、実名で書くことを自分に課してきた。近所の主婦の性を取材した時や、ニューヨーク・タイムズ紙内の権力闘争について書いた時でさえ、すべて実名で書いた。それには長い時間をかけてゆっくりと取材相手との人間関係を作る必要があった。実名を書けない者からの情報を疑っていたら、イラク戦争報道での間違いは起きなかった。
 --ご自身もハイテクは使わないのですか。
 ◆携帯電話は持たない。インターネットにはアクセスしない。Eメールもやらない。自分で確認したことしか信じないため、資料整理も自分でやる。取材の約束も自分でとるため秘書もいない。私は昔かたぎのジャーナリストで、自分の足で外に出るようにしている。今でもほぼ毎晩、食事は外で誰かと一緒だ。20~30年前に取材した相手と今でも付き合っている。ゆっくりと作った関係は長続きする。
 --新聞業界だけでなく、ハイテクが米社会を劣化させているのでしょうか。
 ◆60年代初め、私は巨大橋の建設作業員を取材した。彼等はその後、世界貿易センタービル(66~73年建設)工事に携わった。米同時テロ(01年9月11日)でこのビルが全壊した時、彼らは「やっぱり」と思ったという。建設費抑制のために資材を軽くし、テナントを多く入れるため空間を広げたのが原因だ、と年老いた作業員らは私に説明した。エンパイア・ステート・ビル(31年完成)やブルックリン橋(1883年完成)なら、完全に崩壊することはないと思うとも言った。経済性や効率性を優先して、簡単に造ったものは壊れやすい。
 --米国に変革を訴える黒人大統領が生まれました。
 ◆ブッシュ前政権は他者の意見に耳を貸さず、米国には自分たちの好きなように世界を変える権利があると思っていた。それは間違いだ。イラクで米国がやったことは人権侵害であり、大統領や副大統領は戦犯だ。だから、私はオバマ大統領誕生に興奮した。彼はロシアとの関係改善に動き、イランとの対話も模索している。外国の信頼を失い、ウォール街に強欲な者たちが集う米国が、生まれ変わるチャンスだと思う。【ニューヨーク小倉孝保、写真も】

ノンフィクション作家 ゲイ・タリーズさん(77)
Gay Talese 米ニュージャージー州生まれ。ニューヨーク・タイムズ紙記者からニュージャーナリズムを代表する作家に。作品に「汝(なんじ)の父を敬え」や「王国と権力」など。

    --「〔オピニオン〕インタビュー急接近 米国の新聞はどこで間違ったのですか ノンフィクション作家 ゲイ・タリーズさん(77)」、『毎日新聞』2009年04月03日(金)付。

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