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十日ぶりのお米

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 むかしむかし、私が少年のころ、日本橋の三越へ出かけて、折しも十五代目・故市村羽左衛門を見かけ、サインをねだったところ、数日後を約してくれ、その当日、胸をどきどきさせている私の前へ約束どおりにあらわれた天下の名優・羽左(うざ)氏がサイン入りの色紙と出演中の歌舞伎座の切符を贈ってくれたことがある。
 (こんな子供も、いまに大きくなって、歌舞伎ファンになるのだから……)
 という羽左氏のやさしい心を、私はたしかに受けとめた……ように、いまでもおもっている。
 その感動は五十をこえた今も日に日に新しく、有形無形に、いまの私への影響をあたえているのだ。
 さて、そのときの素顔の十五代目・羽左衛門そのものの顔を、私は〔松鮨〕のあるじに見たのだった。
 それから十五年を経た現在では、松鮨の羽左氏も、いささか老けてきてはいるけれど……。
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 銀座資生堂の料理長・高石鍈之助は、こういった。
 「料理人は常に眼を肥やす努力をし、絵画も生け花もわからないといけない。それでないと、美しい、清潔な盛りつけができません」
 〔松鮨〕のあるじ・吉川松次郎の美意識がどのようなものであるかは、小さいが、しかし文句なしに完璧な店内へ足を踏み入れただけで、たちまちにわかる。
 ついで、あるじがにぎる鮨や、手早く盛りつけて出す酒の肴を見れば、たちどころにわかる。
 ガラスのケースへ、これ見よがしに魚介を並べたりはせぬ本格の鮨やなのである。
 東京ふうでもなく、大阪ふうでもなく、京都ふうでもない独自の鮨だ。それをにぎるあるじの爪の中までもなめたいほどの美しい鮨だ。あるじの指も詰めも鮨と同化している。あるじの手先が〔鮨〕になってしまっている。
    --池波正太郎「三条木屋町・松鮨」、『散歩のとき何か食べたくなって』新潮文庫、昭和五十六年。

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一週間以上休みが無く、東京へもどると、大学から送付されたレポートの山に驚いたわけですが、休みの金曜日にすこしだけ片づけると、これはもうどうも仕事をする気力が続かず、目星も見えてきましたので、休みだから休もうということで、すこしだけ休ませていただきました。

ちょうど、その日は息子殿の遠足でしたので細君も不在で、「何かつくっておいてくれ」とのことでしたが、つくる気力もなければ、智慧もないというわけですし、家で何かせかせかと造るのも面倒だなということで……夕刻の早い時間、気分転換へと、家族と鮨を食べにいって参りました。

もちろん、池波正太郎(1923-1990)氏が美しく描く「松鮨」の「鮨」には足下にも及びませんが、近所の廻る鮨やさんですが、これがマア比較的丁寧にこしらえるところがありますので、ちと旬の味わいを堪能させていただいた次第です。

いろいろと近況がバタバタしておりましたで、ひとつのリフレッシュにはなりました。

廻る鮨やさんですが、にぎってもらう注文もできますので、季節モノのさより、生しらす、桜えびを頂き、季節を感じさせてくださる大自然の営みにおもわず合掌です。

めずらしいところで、豊後水道の八幡鯛っていうのを塩で味わいました。
天然岩塩を目の前で削ってのせてくれた一品ですが、塩によって鯛の甘さがひきたつわけで、思わず唸ってしまいそうになりました。

お酒はプレミアムモルツの生2杯を流し込んでから、東京の地酒「澤ノ井」の大辛口を3合ほど頂きましたが、きっちりとしまった飲み応えで、まるで鮨とお酒が美しいソナタでも奏でるという具合です。

さて、久し振りに鮨を食べたことで思い出しましたが、思えば、10日近く「米」を食べてはおりませんでした。「米」を飲んではいましたが……。

お陰で日頃より多めに頂きましたが、その満腹感は、苦しくなく、むしろ一種の爽快感すら覚えた初夏の夕刻です。

短い息抜きは半日で終わりましたが、さあ、今日からまた一日一日を丁寧に過ごして参りましょうか!

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生しらす、桜えびは、それぞれ相模湾と駿河湾。
八幡鯛は醤油ではなく塩で頂きましたがこれがまた絶品です。

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