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なにやってんだか……

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 「これがどん底だ」などと言っていられる間は、どん底にはなっていないのだ。
    --シェークスピア(野島秀勝訳)『リア王』岩波文庫、2000年。

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ときどき、どうしようもない虚無感に襲われることがあります。
なんといいますか……「オレ何やっているんだろうか?」って。

安い給料ですが……同世代の半分?……タツキとしての仕事も真面目に取り組んでおります。

本業?のほうも「倫理的な性格を強く」もって、授業を行い、レポートをみたり、論文を書いたりしております。

この業界でいうと遅筆のほうでしょうが……それでもここ5年は毎年1本と決めて積み重ねており、紆余曲折しながら博士論文もまとめつつ……

ある意味では、「きちんとやっている」とはいえなくはないのですが、

……なかなか“開く”ことができず・・・、

どうしようもない至上・市場経済の最前線で、責任(役職)がありますので、ぶっとおしで食品レジなど何時間もうっていると……、

「オレ何やっているんだろうか?」

「そろそろ潮時じゃアねえの?」

「学位だけ取れば、学問商売なんか辞めてしまい、民間で会社勤めやったりとか、田舎に帰って引き籠もって晴耕雨読でもすれば……?」

……などと、どうしようもない虚無感に囚われてしまいます。

ちょうどここ数日アリエナイほどの時間、……レジ担当者の当日欠勤とかそのへんで、をい、お前らっ!……、食品レジをうち続ける中で、精神がひさしぶりに疲弊してしまいました。

しかし、まさにどうしようもない話です。

働かなければ食べても行けず……。
それなら博士課程のときにしっかりやっておけばよかったというのも後の祭りで、学生時代に結婚もしておりますので、当然父親とか主人としての役割も放棄できず、それも、あんまり丁寧にはやっておりませんが、それでも最低限のことはやっており、付加価値もついてきますので、時間が飛んでいく……。

まさにどうしようもない話です。

それでも年頭からこれだけは毎日やる!と決めて、本業、そして本業の仕込となる語学の手入れとか、そこからふくらませていく周縁分野との知的交流は欠かさずやってきましたが、なかなか、

「これ!」

……っていうかたちにならず、それと相反するような現実生活にて、

「はあ、なにやっているんだか」

……っていう毎日です。

日曜は市井の職場でもアリエナイ、アリエナイ!と心のなかで叫びつつ、リアルコンクリート外壁にパンチをぶっこんでから、手が痛いのでがっつり飲んでしまいました。
ですからので、月曜は比較的ゆっくりと起きました……といいますか、起きざるを得ませんでした。

昼過ぎに起きると、細君から、

「偏頭痛で動けないので、息子殿を幼稚園まで迎えに行ってくれ」

……というわけでゲフゲフしながら、エッチラオッチラ迎えに行ってから帰宅すると、

「先生から手紙がきているよ」

……っていうので、汗を拭いつつ

郵便物に目をやると、

学問の師匠・鈴木先生からの執筆物とお手紙でした。

おそるおそる開封すると……、

博士論文で扱っている吉野作造(1878-1933)のキリスト教信仰にかかわるエッセーでした。

先日、そうした小文をまとめているよ……っていう話は伺っておりましたので、その完成稿を頂戴したのですが、これは狭い分野になりますが、学問商売という本業においては、その内容はまさに悩んでいたところ……人生論的悩みではありませんが……に対するひとつの明確な光明のような、示唆のような、……要するに援護射撃のような内容にて……、

「せんせい、ありがとうございます!!」

……と、落涙しつつ、ご自宅を遙拝したものです。

……って、市井の仕事へ出かけて、今日もハンパ無いレ地獄=レジ地獄でしたが、なんとか時間をこじ開け、先生宅へ御礼の電話をかけました。

論文の、前回手直しからの進捗具合とか近況のご報告とか相談とかしつつ、

「けっこうきついです」

……ってぽろっと吐露したわけですが、

「今がね、ふんばりどころなんだよ、一歩でも一歩でもすすんでいくしかないんだよ」

……って激励されてしまいました。

ほんとうに、ありがとうございました。

その一言で、なんだか、ひとつ、「なにやっているんだろうか」ってわだかまりがとれたようで、もう一度、戦っていくことができそうです。

人間は人間によってしか磨かれない……このことだけは確実です。

「きちんとやっている」ならそれが形になるまでは「やっていく」しかないのでしょう。

これから一ぺえ飲んで起きてからまたがんばります。

どうでもいい話でした。

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告白・独白・毒吐の日々」カテゴリの記事

コメント

お久しぶりです。うへのです。

学問を本気でやっていると、どうしようもない虚無感に襲われるのは事実で、「オレあと10年以上も学生?」とか、「本当に研究者になれるの?」とか、「ってか、哲学なんてやったところでなんかいいことあんの?」とか、絶望感におそわれることがままあります。

とりわけ、心無い人に「そんな年でまだ親のすねかじっているのか!」とか、「社会の役に立たないクズが!」(ここまで強い調子ではないのですが……)とか、言われるとレンタカーでも借り出して秋葉原に突っ込みたくなります(笑)。

哲学なんて、一般的に役に立たない(と思われている)ものをやっていることの罪悪感に打ちのめされたりもするのですが、そーは言っても哲学的なものが好きな自分がいるのも確かなことで、周囲の雑音に耳をふさぎながら、先の見えない将来にかすかな希望を抱いてなんとかやっている次第であります。

結婚もして、家庭も持って、さらに研究を進めている宇治家さんのような人を見ていると少しだけ勇気を貰うことができます。

頑張って下さい!!

投稿: うへの | 2009年9月10日 (木) 09時47分


うへのさんゑ

ご無沙汰しております、宇治家です。
ぼちぼち後期の授業の開始ですね。がんばってください。

しかし、「少しだけ勇気を貰うことができます」とはもったいないオコトバで恐縮に思う次第で、忸怩たる宇治家です。

この世界……特に狭い人文科学の世界は、本当に現実は隙間産業で、なかなか仕事のないのが現実です。少し昔の専任の競争率が非常勤の競争率へと移行する時代です。

ですけど、なんとかしていこうと思います。

大切なのは、やはり……通俗的ですが……①目標にむかって果敢に挑戦=仕込んでいく、と同時に②(①とは相反しますが)なるようになるところとなるようにならない部分があります。

その意味では、ときどき頭に来ることとか、キルケゴールのいうような「限界状況」に直面させられるわけですけども、ぶれない土台を作っておくしかありません。

とわいえ、自分もまだまだで、博論の追い込みと、紀要の論文締め切りのダブルパンチで啼きそうな毎日ですが、できるところから毎日手をつけていくしか、ぶっちゃけありません。

うへのさんもがんばってくださいまし。

……って蛇足ですくどい話ですが、

学部時代にやっておいた方がよいのは、やはり①語学(現代英米語と古典語)、②読めるだけの幅広い本、……っていうのは事実です。教壇に立って、そして論文を書くようになると分かります。

①は、極端な話ですが……極端な話デスヨ……、しゃべれなくてもいいと思いますが、関連言語は読む分には不自由しない方がよいかと思います。②はいうまでありませんよね。

ということでおやすみなさい。

投稿: 宇治家参去 | 2009年9月11日 (金) 02時45分

おはようございます。

語学の重要性は重々承知しております。
現在ドイツ語を勉強していて、ドイツ語については将来的にドイツの大学院で勉強したいので完璧にしようとしています。読みたい文献との兼ね合いで、フランス語とやっぱり外せないラテン語。それから、英語も文献がすらすら読めるレベルにしないとなーと将来を描いています(できれば最近熱いイタリア語も!?)。

ただなかなか前に進まないのも事実(根本的に語学の才能がない?)で、地味に単語の暗記とかしていると、これを他の語学でもやらなきゃいけないのか……と気がめいる始末であります。

本はもともと読書は好きなほうですので、ジャンルを問わず、通読できたものだけでも月に10冊以上は読むようにしています。

とは言え、できるだけ哲学書を読まなければいけないのも事実で、しかし、こればっかりはなかなか先に進みません(語学と一緒じゃん!)。今、純粋理性批判と省察を平行して読んでいて(数人で)、確かに精読するとものすごく勉強になるし面白いのですが、昔の野党の牛歩戦術が脳裏に浮かぶような遅々とした進み具合なので、少し不安になるというか……、てっとりばやく哲学史の見取り図が欲しいなと思ったりもします。

そこで、宇治家さんにお聞きしたいのですが、何かお薦めはないでしょうか?フランス思想くらいまでをカバーしていて(できれば英米系まで)、しかも重厚なやつ。

個人的には、量義治の「西洋近世哲学史」がすごくよくて、あのくらいのレベルでドイツ観念論後から現代哲学くらいまでに言及しているものを探しているのですが、なかなか見つけられず(波多野精一の「西洋哲学史要」もよかったのですがコントくらいまでで止まっていますし)……。

何か推薦していただけると嬉しいです。

投稿: うへの | 2009年9月11日 (金) 11時33分

うへのさんゑ

ちょいと昨日痛飲しましたので、ちょいとおちついてから、ご紹介しますので、ちょいとお待ちを!
すいません。

投稿: 宇治家参去 | 2009年9月12日 (土) 14時58分

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