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秋期スクーリング出講依頼到着ス:談話と演説とに至っては必ずしも人と共にせざるを得ず

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 学問はただ読書の一科に非ずとのことは、既に人の知るところなれば今これを論弁するに及ばず。学問の要は活用に在るのみ。活用なき学問は無学に等し。在昔或る朱子学の書生、多年江戸に執学して、その学流に就き諸大家の説を写し取り、日夜怠らずして数年の間にその写本数百巻を成し、最早学問も成業したるが故に故郷へ帰るべしとて、その身は東海道を下り、写本は葛籠に納めて大廻しの船に積み出せしが、不幸なる哉、遠州洋において難船に及びたり。この災難に由って、かの書生もその身は帰国したれども、学問は采皆海に流れて心身に附したるものとては何一物もあることなく、いわゆる本来無一物にて、その愚は正しく前日に異なることなかりしという話あり。今の洋学者にもまたこの掛念なきに非ず。今日都会の学校に入りて読書講論の様子を見れば、これを評して学者と言わざるを得ず。されども今俄にその原書を取上げてこれを田舎に放逐することあらば、親戚朋友に逢うて我輩の学問は東京に残し置きたりと言訳けするなどの奇談もあるべし。
 故に学問の本趣意は読書のみに非ずして精神の働きに在り。この働きを活用して実地に施すには様々の工夫なかるべからず。「オブセルウェーション」とは事物を視察することなり。「リーゾニング」とは事物の道理を推究して自分の説を付くるなり。この二箇条にては固より未だ学問の方便を尽したりと言うべからず。なおこの外に書を読まざるべからず、書を著さざるべからず、人と談話せざるべからず、人に向かって言を述べざるべからず、この諸件の術を用い尽して始めて学問を勉強する人と言うべし。即ち、視察、推究、読書はもって智見を集め、談話はもって智見を交易し、著者演説はもって智見を散ずるの術なり。然り而してこの諸術の中に、或いは一人の私をもって能くすべきものありと雖も談話と演説とに至っては必ずしも人と共にせざるを得ず。
    --福沢諭吉『学問のすヽめ』岩波文庫、1978年。

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いつ来るのかとちょいとハラハラ待っていた書類がようやく大学から到着しました。

通信教育部の秋期スクーリングの出講依頼書類一式です。

土日を使っての集中講義で、ちょうど1期(B群)で『倫理学』を講じる「予定」でしたが、「予定」は「予定」でしたので、依頼書類を受け取りひとまず安堵です。

秋期スクーリングは今回でちょうど2回目。
昨年の秋から担当させて頂くようになったのですが、ちょうど体裁としては、大学で実施する「地方スクーリング」の趣のような構成ですが、やはり2カ月間の土日のほとんどがそれにあてられておりますので、また雰囲気が微妙に違うものなんだよなア~と昨年は感慨あらたにさせられたものですが、ちょうど初回の昨年は、かなりアグレッシヴといいますか、熱心な学生さんが多く、詰問攻め……もとい質問攻めにあったのが印象的で、ぼちぼち晩秋へと移行する錦秋のキャンパスで、まさに「倫理(学)とは何ぞや」と我ながら考えさせられたものです。

ただし……、18時前で授業は済みましても、約束なんかがありまして、舞台?をかえて講義?がつづくわけでして、まさに1回1回が一期一会であるわけなのですが、非常に印象深い思い出になったことが、いまでも鮮やかによみがえってきます。

さて……。
届けられました書類は、事務手続きの書類になりますので、また印刷物などをぎりぎりまで粘る(=締め切り期日を失念して前日当たりに猛ラッシュをかけるといういつもアレ)というのは避けながら、早めにぱっぱぱっぱと処理しながら、最高の授業ができるようにがんばっていく決意です。

この「倫理学」という科目は、制度編成上、レポート+科目試験でも単位が習得できます。またレポート+スクーリング(試験含む)というパターンでの習得も可能です。

教材を自分で読み、レポートをまとめ、試験をうけてパスする割合のほうが高い科目だとは思いますが、その選択肢を選ばず、あえて、わざわざ対面授業を受けに来てくださるのはありがたいものです。

学問とは「視察、推究、読書」をもって身に得ることはできますが、福澤諭吉(1835-1901)がいう通りそれがすべてであるわけでもありません。

対面授業とはまさに「談話はもって智見を交易し、著者演説はもって智見を散ずる」双方向の現場なのだろうと思います。

そこを丁寧に拵えてまいりますので、履修される方はどうぞよろしくおねがいします。

教材だけじゃない部分で、何か、「お土産」をもって帰らせることのできる授業でありたいものです。

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