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「幸福を直接の目的にしないばあいに却ってその目的が達成されるのだ」

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 この時期のいろいろな経験は、私の考え方や性格に、二つのいちじるしい影響をもたらした。第一にそれは、私に新しい人生理論を採用させるに至った。それはそれまでの私の行動のもとになっていた理論とは非常にちがって、当時はまだ一度も聞いたこともなかったのだが、カーライルの反自我意識説と大いに共通性のある考え方であった。私の、幸福があらゆる行動律の基本原理であり人生の目的であるという信念は微動もしなかったけれども、幸福を直接の目的にしないばあいに却ってその目的が達成されるのだと、今や私は考えるようになった。自分自身の幸福ではない何かほかの目的に精神を集中する者のみが幸福なのだ、と私は考えた。たとえば他人の幸福、人類の向上、あるいは何かの芸術でも研究でも、それを手段としてでなくそれ自体を理想の目的としてとり上げるのだ。このように何か他のものを目標としているうちに、副産物的に幸福が得られるのだ。人生のいろいろな楽しみは、それを主要な目的とするのではなく通りすがりにそれを味わうときにはじめて、人生を楽しいものにしてくれる、というのが私の新しい理論だった。一旦それを人生の目的としてしまえば、とたんにそれだけでは物足らない気がしてくる。楽しみなどというものは細かく吟味すれば必ず何かボロが出てくるものだ。自分は今幸福かと自分の胸に問うて見れば、とたんに幸福ではなくなってしまう。幸福になる唯一の道は、幸福をでなく何かそれ以外のものを人生の目的にえらぶことである。自意識も細かな穿鑿心も自己究明も、すべてをその人生目的の上にそそぎこむがよい。そうすれば他の点で幸福な環境を与えられてさえいるならば、幸福などということをクヨクヨ考えなくとも、想像の中で幸福の先物買いをしたりむやみに問いつめて幸福をとり逃したりせずに、空気を吸いこむごとくいとも自然に幸福を満喫することになるのである。こういう考え方がこのころから私の人生哲学の基礎となった。そして現在でもなお私はこの理論を、感受性も楽しみを享受する能力も普通の程度しか持たないすべての人たち、言いかえれば人類の大多数の人にとっての、最上の理論として堅持しているのである。
 この時期に私の考え方が受けたもう一つの重要な変化は、私がはじめて個人々々の内的教養というものを、人間の幸福にとって第一義的に必要なさまざまなのことがらに加えて正当に重視するようになったことである。外的な状況をととのえるとか、人間を思索とか行動とかのために訓練するとかいうことだけを重要視していたのが、ここでおしまいになったのである。
    --ミル(朱牟田夏雄訳)『ミル自伝』岩波文庫、1960年。

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功利主義の思想家として名高いジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill,1806-1873)は、自伝の中で幸福の本質をめぐる議論をしておりますが、そのなかで、「幸福を直接の目的にしないばあいに却ってその目的が達成されるのだ」と興味深い幸福論を提示しております。

「幸福になりたい」とあがけばあがくほど、実は幸福から遠ざかるのがその実なのかもしれません。

ひとは何かに真剣に取り組み、格闘するなかで、幸福が「おつり」のように付いてくる……これが実体なのでしょう。

宇治家参去は無類の酒好きです。

しかし、「酒を呑みたい」と願えば願うほど、「幸福」から遠ざかってしまうというものです。そしてその逆に、莫逆の友と語りながら、「酒」自体を目的とせず、飲めば飲むほど、「幸福」が近づいている……これが人生の実相かもしれません。

……ということで、先週の土曜日、名古屋出張のおり、忘年会に参加してきました。

名古屋で忘年会?というわけですが、忘年会です。

中部・関西・東海の莫逆の友たちと楽しいひとときを過ごすことができ、ありがとうございましたっ!

最初に訪問したのは、

「菓酒房 じらふ」。
愛知県名古屋市中区丸の内1-14-31 名エンビル1F

名古屋市中区の丸の内にある逸店です。

多国籍創作料理が中心ですが、若者向けにちょいと洒落た感じなのですが、料理を丁寧につくっている……そのあたりを唸らされた最高のステージで、乾杯させて頂きました。

初日の授業が済んでから、一旦ホテルへ戻り、汗を流してから、歩いて向かいましたが、外気の肌寒い名古屋の夜でした。

ですけど……、

ちょいと集合時間に遅れて会場へ到着しますと、莫逆の友たちの熱気と覇気に圧倒されて、冷え切った躰と心が温まるものですから不思議なものです。

先に言及したとおり、肉と魚、そして野菜を丁寧に調理した季節の料理に舌鼓をうちつつ、黄金の思い出を刻ませて頂きました。

参加された皆様ありがとうございましたっ!

その日は別に「幸福になろう」「酒を楽しもう」と思って参加したわけではございません。

しかし、結果として見てみれば「幸福」を体感し、「酒」を味わうことができたわけですので……、ミルの謂っていることは正しいのかも知れません。

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