「寒い日にぬるま湯からあがって燗冷ましの酒でもよろこんでのむような……そんな人」
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役宅へ移ってからの安五郎(引用者註……火付改盗賊方同心・小柳安五郎のこと)は、昼夜の分かちもなく職務にはげんだ。それまでは、どちらかというとおっとりした人柄で、口の悪い木村忠吾が、
「小柳さんは、寒い日にぬるま湯からあがって燗冷ましの酒でもよろこんでのむような……そんな人ですなあ」
などと、おのれのことは棚にあげて、けしからぬ蔭口をきいたりしたものである。
それが、妻子を亡くしてのち、まるで人が変わった。身を粉にして、いかなる危険をもかえりみず、率先して悪人どもを相手に闘った。
火盗改メの役目は、絶えず危険に直面しなくてはならぬ。
--池波正太郎「あきれた奴」、『鬼平犯科帳 8』文春文庫、2000年。
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24時過ぎに会社を辞して帰ろうとすると、風が吹いているわけでもないのですが、結構寒く、この冬一番か!……などと思いつつ、かじかんだ指先をほぐしながら自宅にて安堵する宇治家参去です。
最初は、やっぱり冷えたビールだと思い、ビールをものの数十秒にてゴキュゴキュと流し込んだ次第ですが、日本酒をどう扱うかとフト悩み、池波正太郎先生(1923-1990)の『鬼平犯科帳』を繙きながら、今日は……熱燗にするか!
……そう決意する宇治家参去です。
基本的には、日本酒は“冷や”しかやりません。
熱燗で頂くのも2年ぶりぐらいでしょうか。
わくわくしながら……鍋に湯を張り徳利を浸した次第です。
さて……。
「あきれた奴」に登場する小柳安五郎は本当にすごい人なんです。
宇治家参去自分自身と較べても見るまでもない、仰ぐべき北極星といえるような人物……くわしく本編をお読み下さい……なんです。
宇治家参去自分自身と較べるのも恐縮なんです。
ですけど、家人からの評価……小柳さんの場合は、“兎の忠さん”と渾名される盗賊改メのヘタレ同心からの評価というわけですが……という点では、同じでありまして……。
どうやら、自分自身も「寒い日にぬるま湯からあがって燗冷ましの酒でもよろこんでのむような……そんな人ですなあ」
……などと揶揄される始末です。
今朝は、2時半にばっちと目が覚めてしまい、それ以来仕事を続けておりますが、ぼちぼち目蓋が法要……もとい、抱擁しそうな状況です。
ただしかし!
気が付くと……
レンジではなく、きちんと湯燗したとっくりの酒が、写真をとったり、日記をかいたりしておりますと、「燗冷ましの酒」のようになっておりましたっ!
やっぱり……。
「「寒い日にぬるま湯からあがって燗冷ましの酒でもよろこんでのむような……そんな人」のようですか……ねぇ~。
もう一度「燗」をしましょうか。
いずれにしましても“イラ菅”よりはマシかもしれません。
鬼平犯科帳〈8〉 (文春文庫) 著者:池波 正太郎 |
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