I hope that you will start off by helping yourself in better ways.
-----
幸福は、きわめてまれな場合を除いて、幸運な事情が働いただけで、熟した果実のようにぽとりと口の中に落ちてくるようなものではない。だからこそ、私は本書を「幸福の獲得」と呼んだのだ。というのも、避けられる不幸や避けられない不幸、病気や心理的なもつれ、闘争や貧困や悪意にこれほど満ちあふれている世界にあっては、幸福であろうとする男女は、一人ひとりの人間が襲われるおびただしい不幸の原因をうまく処理する方法を見つけなければならないからである。二、三のまれな場合、別にたいした努力を要しないこともある。おおらかで気立てがよく、十分な財産を受け継ぎ、健康に恵まれ、さらに単純な趣味を持っている人は、一生をすいすいと安楽に暮らしていき、いったい何を騒ぎ立てるのか、と不思議がるかもしれない。器量のいい、なまけ者の女性も、もし妻の努力を少しも求めない金持ちの夫とたまたま結婚し、また、もしも結婚後太ることを気にしないのであれば、子供に関して幸運であるかぎり、同様に、のうのうと安楽に暮らしていけるかもしれない。しかし、そういう場合は例外的である。大半の人は、金持ちではないし、多くの人は、気立てよく生まれついてはいない。多くの人は、騒ぎやまぬ情熱を持っているので、平穏で規則正しい生活はたまらなく退屈に思われる。健康は、神の恵みであるが、だれもそれを保持しうる自信は持てない。結婚は必ずしも至福の源ではない以上のような理由で、幸福は、たいていの男女にとって、神の贈り物であるよりも、むしろ、達成されるものでなければならない。そして、これを達成する際には、内的ならびに外的な努力が大きな役割を演じなくてはならない。
−−ラッセル(安藤貞雄訳)「努力とあきらめ」、『ラッセル 幸福論』岩波文庫、1991年。
-----
古代ギリシアの歴史家ヘロドトス(Herodotus,c.484 BC – c. 425 BC)は、アテナイの賢者ソロン(Solonc,638 BC–558 BC)の『歴史』(村川堅太郎編、松平千秋訳『世界の名著 ヘロドトス トゥキュディデス』、中央公論新社、1980年)のなかで「人間死ぬまでは、幸運な人とは呼んでも、幸福な人と呼ぶことは控えなければなりません」という言葉を記録しております。
賢者ソロンは、サルディスのクロイソス王のもとを訪問したおり、うえの言葉を残したそうですが、今をときめくクロイソス王はその言葉に不服であったそうな。
ヘロドトスの記すところでは、そのクロイソス王は後年戦いに敗れ火あぶりにされそうになっとき、ソロンの言葉を思い出したそうですが、このエピソードが物語るところは、まさにluckyとhappyは全く違うということなのでしょう。
さて……
宇治家参去は、ネットオークションでよく出品をします。
このところ多いのが……いちどは下火になったのですが、eBay、ヤフオクなんかでも最近増発?傾向……出品物の「質問欄」関係での次のような質問です。
正直、ウザって思うことがしばしばです。
業界ではいわゆる「Nigerian money transfer fraud, Nigerian 419scam(ナイジェリア詐欺)」といわれる直接取引のオーダーなのですが、要するに、かなり良い条件……通常の落札価格の十倍程度!……で直接取引しましょう! すぐに振り込むから……っていう手合いです。すこしエレガントで、ワールドワイドになった「振込詐欺」の手合いでしょう。
めんどうなので、以下の文面をコピペしてスルーするわけですが
Dear Mr. ××
I was going to play along with your implausible offer,
but now I changed my mind as I realized that it serves no point.
What you are doing may get you few items for free.
It may even make you feel good temporary.
Alas, you will sooner or later realize that such pleasure through wrongdoings come at great cost.
I am sure in your heart you KNOW that you can never feel well, knowing someone was sacrificed for it.
What is lost through Victims' sorrow is far bigger than what you gain. You know that.
On the other hand, the opposite is also true.
If you could make someone feel good, bright, and then empathize with their happiness,
you will gain all the reward you could possibly ask for - to see smiles from those around you would mean everything to you.
Perhaps this, you may not have known.
Mr.××, I feel that maybe you are going through difficult times.
Relationships, financial situations, working conditions, illness, etc. We all face numerous problems in our everyday lives.
Here is my advice to you; There is no need to feel anxious about the situation in which you are put into.
You have the power to change. You can break away from who you are, at any given time. To grow, make change, or to advance, is simple.
I hope that you will start off by helping yourself in better ways.
Good Luck.
スパムな書き込みですが、本来は「Good Luck」ではなく「All the people know your Nigerian frauds! Die, idiot !」と締めたいところですが、嫌がらせでもされるといやなので、うえのような文章でお茶を濁してしまうわけなのですが……。
入力しつつ、まさにはあ~って深い溜息が出てしまいます。
先ほどのヘロドトスの記したソロンの言葉ではありませんが、洋の東西を問わず、HappyとLuckyをきちんと立て分けるところにそもそも幸福論とは成立するものです。
論理哲学者として名高いバートランド・ラッセル(Bertrand Arthur William Russell,OM,FRS 1872-1970)が「幸福は、きわめてまれな場合を除いて、幸運な事情が働いただけで、熟した果実のようにぽとりと口の中に落ちてくるようなものではない」と指摘したはずなんですが……。
メッセージを読み、定型文を入力する作業が15秒としても、仮にそれが1日1件あったとするならばおよそ1時間30分はゆうにかかります。
まさに、はあ~って深い溜息が出るわけですが・・・、
「I hope that you will start off by helping yourself in better ways.」とも同時に思わざるを得ません。
こっちからこっちが「まともな」人間で、こっちからあっちが「まともでない」人間=非人間(乃至は「人間以下」の事物)とあんまり、立て分けたくないんです。
ですからねぇ~。
「幸福は、たいていの男女にとって、神の贈り物であるよりも、むしろ、達成されるものでなければならない。そして、これを達成する際には、内的ならびに外的な努力が大きな役割を演じなくてはならない」との言葉を噛みしめて頂きたいものです。
ま、いずれにしても、誰が見ていなくても神は見ているでしょうし(キリスト教の文脈)、「還著於本人」(仏教の文脈、法華経観世音菩薩普門品第二十五)なわけですから……ねぇ~。
……って善処を促しても、プロはプロですから無駄なのかしら……って悩みつつ、本日は自家用の日本酒が切れてしまったので、新しい日本酒をと思ったのですが、「健康は、神の恵みであるが、だれもそれを保持しうる自信は持てない」わけですので、健康を考え久し振りに本格焼酎にした次第です。
「黒糖焼酎 里の曙」(町田酒造株式会社、鹿児島県)!
しっくりと確かに残る黒糖の甘みがなんともいえません。
| 固定リンク
「哲学・倫理学(現代)」カテゴリの記事
- 日記:郷土やその伝統と文化を大切にしたり学ぶというよりも、stateに従順で反論しない人間育成としての道徳科「愛国」教育という中身(2015.02.14)
- 日記:「本人」は「本人」以外の他者や機関によってはじめて「本人」が「本人」であると担保づけられる(2015.02.12)
- 日記:福沢諭吉生誕180年にして想う(2015.01.10)
- 日記:なぜ、真摯な自己反省が、外界に目を向け他者と出会う真のプロセスの要因となり得ないのだろうか。(2015.01.01)
- 日記:2014年の3冊(2014.12.31)
「現代批評」カテゴリの記事
- 日記:現実に定義があるにもかかわらず、「定義されていない」と言葉を弄して、定義自体を変えていく。これが安倍政権のやり方。(2015.03.27)
- 日記:積極的平和主義を「後方支援」するのみならず歴史修正主義に積極的に荷担する公明党(2015.03.23)
- 日記:「紹介したい大切な価値観、八紘一宇」(三原じゅん子代議士)、ええと……「日本の理想を生かすために、一先ず此の国を葬って下さい」(矢内原忠雄)(2015.03.19)
- 日記:曽野綾子化する林真理子(2015.03.17)
- 日記:果たして政権暴走の歯止めの役目を果たしているだろうか(2015.03.13)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント