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「のらくらと日を送る」ようにみせながら……

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 日常性とは、現存在が「のらくらと日を送る」有様(ヴィー)を言うのであって、それが現存在のすべての態度であろうと、ただ一定の、相互存在によって素描された態度であろうとも、構わないのです。このような有様にはさらに、たとえ重荷になるもの(ダス・レスティゲ)や「厄介なもの(ヴィーダーヴェルティゲ)」を強いるにせよ、なお習慣のなかでの快適さが属しています。日常の配慮が予期している明日のもの(ダス・モルギゲ)は、「永遠に昨日のもの(エーヴィゲ・ゲシュトリゲ)」です。日常性の単調さは、そのつどまさにその日がもたらすものを〔気分の〕転換〔気晴らし〕(アプヴェクセルング)と受けとります。日常性は、現存在が<ひと>を〔小説などの〕「主人公」と選ばなかったばあいでも、現存在を規定します。
    --ハイデガー(桑木務訳)『存在と時間(下)』岩波文庫、1990年。

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ハイデッガー(Martin Heidegger,1889-1976)は、人が日常生活のなかにのみこまれてしまう有様を、「頹落」として批判したことで有名です。
しかしながら、つまるところは、どうしようもない……顧みる必要がないと切り捨てられてしまうという意味ですが……と顧慮に値しないとされる日常生活に「頹落」されてしまうのか、それとも「頹落」されたように見せつけながらも……要するに日常生活のルールに従うという意味では「頹落」のレールを歩みながらという意味……そこで価値を創造していけるかどうかの分岐点は、そのひとの自覚のあるなしによってしまうのかもしれません。

現代的日常生活が誕生するのは19世紀後期のヨーロッパです。
工場、会社、学校が成立する時間の到来です。
要するに時間に人間がおわれるようになる生活スタイルの登場です。

ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche,1844-1900)が先駆的に批判し、その営みを思想的思索へと高めたのがハイデッガーかも知れません。

チャップリン(Charles Spencer Chaplin, Jr,1889-1977)の『モダン・タイムズ』(Modern Times/1936)をパラレルするわけではありませんが、何か得体の知れない「できあがった」ディシプリンとしての「日常性」に支配されるのが現代社会の特徴でしょう。

そこで何を自覚していきていくのか。
構造に絡め取られる時代だからこそ、自覚が必要なのかも知れません。
そして大切なのは構造自体を革命家式に廃棄ができないからこそ、構造に籠絡されていることを「承知」のうえで、脱構築していく価値創造の努力が必要なのかも知れません。

……ということで?
火曜日は休みでしたのでまるまる一日、短大の『哲学入門』の定期試験とレポートの採点に一日を追われておりました。
一昨日がっつりと飲んでいたので、昼から起きてまずは、ペーパー試験の採点をしておりました。

その日は、息子殿が剣道教室の日でしたが、細君が生憎の所用とのことで、サルベージを仰せつかっておりましたので、それまでにまずは試験の採点を終わらせ、それからお迎えの時間です。

久し振りに、息子殿の剣道教室の様子を見ましたが、楽しく、かつ、真剣に、剣道をしていることに、少し驚いた次第です。

思想的思索からいえば、顧みるに足らないと断じた日常の一コマを覚醒させる局面との遭遇ということになります。

そして、自己自身の先入見の打破という意味でも一役かった一瞬でした。
宇治家参去も都合10年以上剣道をやっておりましたが、まるっきり楽しい思い出がありません。
マア、親が代々やっているものですからやらされていたという念が強くて、「剣道は辛い」という認識だったがそれだったのですけど、息子殿が真剣に嬉々として竹刀を振っている様を見ておりますと、本人がやりたいといって始めたわけですが、自分自身の憶見とは裏腹な事態になったことに、マア、剣道をやってもらってよかったのかな~などと思った夕べです。

週末に東京都の大会があるようで、本人も本日の練習には熱がはいってい、勝ち抜き稽古でタイトルを6回も防衛している奮戦ぶりには、本人も意識して自覚してがんばっているんだな……などと思った始末です。

しかぁ~し!
本人は、道具の仕舞いと、道衣の畳みができません。

……ということで、宇治家参去の出番となるわけですが、十数年ぶりのしまい込みですから少し、ぎごちなかったというおまけがついてしまいました。

さて……。
防具を片づけてから帰宅しようとすると、幼稚園……剣道教室が幼稚園にあるわけですが……近くの植木やさんの敷地で息子殿が止まれというわけで、しばし自転車をストップ!

敷地に植えられていた梅の花びらが大輪を咲かせているではありませんか!

昨日の東京は雪模様の肌寒い一日でしたが、薄桃色の花びらに、日常生活など顧みるに値しないとその想念を打破する自覚の「心意気」を頂戴した次第です。

息子殿よ、ありがとう!

帰宅してから、今度は70通のレポートとの思想的格闘戦のスタートです。
一昨年より、レポートの提出がすべてオンライン決済?でやることも可能になったので、それでうけましたが、紙ではなく、モニターでみる……wordとかの文書画面ですが……レポートは、目が疲れますね。

なんとかすませて、すべての採点を終わると、23時です。

一月中に終わらせようと思っていたのですが、マア、それでも締め切りにはかなり余裕のある段階で済ませてちょいとホッとしました。

……ということで、これから、アルコール的にちょいとホッとしようかと思います。

常々思うのが、現存在としての自分を「〔小説などの〕『主人公』」と規定して夢想しなくてよかったという点です。

「事実は小説よりも奇なり」との言葉がありますが、日常生活にちょいと目を向けてみますと、小説よりも彩り豊かな側面があるわけです。

ハイデッガーのように鋭敏に日常生活を批判的に断嘩はしませんが、そこを開拓する価値創造の歩みだけは心がけたいものです。そのことで、「小説」などよりも「面白い」発見があるわけですから……ねぇ。

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