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私自身の経験から概括すれば、たいてい煩悶や決心の結果起きるのではない。突然起きてしまっているのである

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 われわれは寒い朝寝床から火のない室におきて出るとどんなであるか、またいかに、われわれの内なる生活原理が起きよとの命令に反対するかを知っている。おそらく多くの人は、いつかの朝決心を敢行することができなくて一時間も寝ていたことがあるであろう。遅くなることも考え、その日の仕事に差し支えることも考える。「起きなければならぬ、これは恥ずかしいことだ」とも思う。しかるに温かい寝床は心地がよすぎて外の寒さは酷すぎる。そして抵抗を打破って決行せんとする瀬戸際までいっては、繰り返し繰り返し決心が消えては延期する。さて、かくの如き場合どうして遂に起きるのであろうか。私自身の経験から概括すれば、たいてい煩悶や決心の結果起きるのではない。突然起きてしまっているのである。幸いに意識の脱失が起こる。温さをも寒さをも忘れてしまう。日常生活に関連のある何かの想像に陥り、その間に「さあ、もう寝てはおられぬ」との観念が閃く。その観念は折よくも、なんら反対や麻痺的な暗示を喚起しないので、これがために直ちにその本来の運動結果を生ずる。われわれの動作を麻痺せしめ寝床の観念を単なる願望の状態において意志の状態におかなかったのは、温かさと寒さとの鋭い観念であったのである。
    --ウィリアム・ジェームズ(今田寛訳)『心理学 下』岩波文庫、1992年。

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意志は万能ではないかもしれません。
身体は意志の力によって統御可能なことは承知ですが、それで総てをうまく説明することは不可能かもしれません。

身体の運動は基本的に意志とは無関係に運動の観念だけで起こりうるのかもしれません。
……ということで、最近、朝勝できていないので、早く起きないと、まさにプラグマティズムの哲学者ジェームズ(William James,1842-1910)の指摘する通り、「『起きなければならぬ、これは恥ずかしいことだ』とも思う」わけですが、同時に、この季節でございます。

「寒い朝寝床から火のない室におきて出るとどんなであるか」ということも知っておりますから、理念とか決意とか意志とか観念以上に、「抵抗を打破って決行せんとする瀬戸際までいっては、繰り返し繰り返し決心が消えては延期」してしまうのが人情なのでしょう。

ですから、そのためには、「早く寝るべき」なのですが、なかなかうまくいきません。

……ですが、今日からは、新しい朝の出発をすべし!

……ととりあえず決意する宇治家参去でした。

ただしかぁ~し!

ジェームズのようなエライ哲学者も、寒い朝の朝寝坊は、わかっちゃいるけど「私自身の経験から概括すれば、たいてい煩悶や決心の結果起きるのではない。突然起きてしまっているのである」というあたりは、どうも人間くさくてよい話です。

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