「現在の不在」として「生気を失った近代人」の隔靴掻痒
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近代は、それが始まったときから、大胆さと不安との対位的な構造によって特徴づけられてきた。大胆さは、デカルトと彼の後継者が示した数学への熱狂によって最もよく説明され得る。大胆さは、自分自身の影、つまり恐怖を投げかける。パスカルの言葉で言えば、「この無限空間の永遠の静けさが、私をぞっとさせる」のである。近代世界の現世的無限性は、それとともに時間経験という近代的な概念をもたらす。再度パスカルを引用すえば、「われわれは、現在のことに関心がない」。それゆえ、「過去や現在は、われわれの手段である。未来だけが我々の目的なのである。だから、われわれは生きているのではなく、生きることを希望しているのだ」。パスカルはこうして、近代の中心テーマの一つ、すなわち現在の不在を導入する。このテーマは、歴史に関するカント的思弁に固有のものである。後で見るように、カントにとって歴史とは、パスカルの言葉で言えば「絶えず幸福でありたいと願っている」人々、したがって決してその目標に達することがないと言わざるを得ない人々が住まうところ、なのである。
--スタンレー・ローゼン(石崎嘉彦監訳)『政治学としての解釈学』ナカニシヤ出版、1998年。
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近代の時間感覚とはつまるところ未来へと無限に投企していく垂直向上型の直進的なモデルではないかと思います。
到来せぬ未来を企画していく現在という感覚とでもいえばいいのでしょうか。中世の一元的な宗教的権威の漆喰から解放されたと謳うのが近代なわけですが、そのじつはそう簡単でもないかもしれません。創造から審判へむけての直進的な時間感覚とはキリスト教に由来する時間論のひとつといってよいかと思いますが、そうした宗教的権威からの解放をもたらしたのが近代社会としても、結局のところ、魔術からは解放(ヴェーバー)されたわけではなく、俗流の、そして、しかもゆがんだかたちのそれが新しい社会に招かれただけなのかもしれません。
※ちなみに、対称的なのがインドの円環的時間感覚ではないかと思います。西洋においては年代史の作成が非常に重要な役割とされたのに対してインドでは年代史の作成がほとんど重視されなかったのは著しい人間観、時間感覚の相違だと思います。
そのへんを手厳しく「生気を失った近代人」として批判したのがニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche,1844-1900)というわけですが、その先駆をなすのが近代の誕生に立ち会ったフランスのモラリスト・パスカル(Blaise Pascal,1623-1662)なのかもしれません。
現在と切り離された未来というものは、結局のところ未来という概念への惑溺というところでしょうか。
「過去や現在は、われわれの手段である。未来だけが我々の目的なのである。だから、われわれは生きているのではなく、生きることを希望しているのだ」。
近代とは、冒頭で引用した政治学者・スタンレー・ローゼン(Stanley Rosen,1929-)がいう通り、「大胆さと不安との対位的な構造」がその特徴だと思います。あれかこれかの対立構造が強調されるなかで、対象と対象が本来もっている有機的な関係が単純な「構造」に分解されてしまうのがその特徴なのでしょう。
ですから未来への投企は「現在の不在を導入」してしまうのかも知れません。
さて……。
金曜は休みでしたので、午前中に事務仕事をしてから、昼過ぎに市井の職場の健康診断。
済んでから、細君と買い物へ外出という強行軍でしたが、遅めの夕方からかる~くいっぺえやらせて頂き、22時過ぎには「アタマと机が合体」するほど眠くなりましたので、布団へ入ったのですが……、、、、
入ったとたんに眠気が醒めてしまい、、、
1時間は布団のなかで「寝るぞ~」と戦いの烽火をあげたのですが、、、
一向に眠くなく、、、
結局のところ、自室へ戻り、仕事を始めた次第です。
寝たいんです。
ですけど眠れない。
これもやはり、「過去や現在は、われわれの手段である。未来だけが我々の目的なのである。だから、われわれは生きているのではなく、生きることを希望しているのだ」というとおり「眠るのではなく、眠ることを希望しているのだ」という「生気を失った近代人」の隔靴掻痒というところでしょうか。。。
しかし!
眠たい……のではなく、眠りたい!!!
政治学としての解釈学 (叢書〈フロネーシス〉) 著者:スタンレー ローゼン |
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