完全な現在の中で呼吸すること、天球の合唱の中で共に歌うこと、世界の輪舞の中で共に踊ること、神の永遠な笑いの中で共に笑うこと、それこそ幸福にあずかることである
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いつか伝説的な「幸福な」人間が実際にいたにせよ、ねたましさをもってたたえられた幸運児や、太陽の愛児や、世界支配者も、わずかに時々、はなやかな恵まれた時間、あるいは瞬間には、大きな光に照らされたにせよ、彼らはほかの幸福は体験せず、ほかの世転びにはずかりえなかったのだ。完全な現在の中で呼吸すること、天球の合唱の中で共に歌うこと、世界の輪舞の中で共に踊ること、神の永遠な笑いの中で共に笑うこと、それこそ幸福にあずかることである。多くの人はそれをただ一度だけ、あるいは数回だけ体験した。しかしそれを体験した者は、一瞬のあいだ幸福であっただけでなく、没時間的な喜びの光輝やひびきのなにがしかを得てきたのである。私たちの世界に、愛するものがもたらした愛、芸術家がもらたした慰めや朗らかさのすべて、そしてしばしば幾世紀ののちも最初の日のように明るく輝いているすべてのものは、そこからくるのである。
--ヘルマン・ヘッセ(高橋健二訳)「幸福論」、『幸福論』新潮文庫、平成十六年。
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週の初めは真冬のように雪が降り、弥生三月ですが「およよ」と思いつつ、週の終わりになると晩春のような陽気でふたたび「およよ」と思いつつ、何か大切なことを忘れてはいけない……との念だけつよく、その何か大切なことを忘れてしまいそうになった宇治家参去です。
はい、昨日は3月14日でしたっ。
1ヶ月まえに細君からドイツ・ワインを頂戴しておりました。
あやうくその返礼をわすれてしまうところでしたっ。
我が家といいますか宇治家参去夫婦は2月14日から3月14日にかけてお互いの誕生日もはいりますので、この時分なにかと出入りの多いものです。
かつ、年度末でけっこう忙しく……心を忘れる=忙しさというわけで、スルーしてしまうことも可能なのですが、奥歯に何か挟まったような違和感が重苦しく、つたない頭を巻き戻しながら再生すると、机のうえにかざることできるような小さな鉢植えがほしいと細君がいっていたことを思い出し、なんとか用意することができましたっ。
ただし用意した鉢植え……すなわち「オレンジ ジョセフィン」というやつには「頭の良くなる花」というコピーが添えられておりますので、そこがチト難ですね。
「ありがたいのですが、こういう嫌がらせをする「二乗」は成仏不可!」
……などと言われてしまいそうです。
ただ、これは自分としては「確信犯(Überzeugungsverbrechen)」でやったわけではないのですが、ま、花が開けば、そうした疑いははれる……ハズ、そう思うことにいたします。
ま、ヘルマン・ヘッセ(Hermann Hesse,1877-1962)が「完全な現在の中で呼吸すること、天球の合唱の中で共に歌うこと、世界の輪舞の中で共に踊ること、神の永遠な笑いの中で共に笑うこと、それこそ幸福にあずかることである」というところでしょうか。
どこかに完全性を求めても詮無いものですから、完全な現在の中で幸福を味わうほかあるまいかと存じます。
世の殿方。
細君は大切にしたほうがようござんす。
幸福論 (新潮文庫) 著者:ヘルマン ヘッセ |
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