「われわれの社会は病人を排除する」のでされないように念入りなアルコール消毒を!
デュルケームや米国の心理学者たちが、病の本質を<ずれ>や逸脱にみいだしたのは、これらの人々に共通の文化的な錯覚のためだろう。西洋の社会は、病人を追放したり、閉じ込めたりするばかりで、病人のうちに自己を認めたがらないのである。病と診断した瞬間に、われわれの社会は病人を排除する。われわれの心理学者や社会学者は、患者を逸脱者とみなし、病的なものの起源を異常なもののうちにみいだそうとするが、こうした分析はなによりも、社会的なテーマを投影したものである。現実には、その社会の成員が示す精神疾患のうちに、社会は自らをポジティヴに表現するのである。社会がこうした病の形にどのような地位を与えようとも、このことに変わりはない。たとえば未開社会でしばしばみられるように、病が宗教的な生の中心に位置づけられようと、われわれの文化のように、社会的な生の外部に位置づけられようと、これに変わりはないのである。
ここで二つのことが問題になる。われわれの文化はいかにして病に逸脱という意味を与え、病人に排除される者という地位を与えるようになったのか。そして、われわれの社会は、病の形のうちに自らを認めることを拒みながら、いかにしてそこに自己を表現するようになったのだろうか。
−−ミシェル・フーコー(中山元訳)『精神疾患とパーソナリティー』ちくま学芸文庫、1997年。
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フランス現代思想の旗手のひとりがミシェル・フーコー(Michel Foucault,1926-1984)です。学生時代はどっぷりとはまり、片っ端から読みあさり、哲学科(倫理学専攻)時代には卒論で論じた思想家でもあり、なつかしい人物です。
初期のフーコーの業績のひとつが『狂気の歴史』(L'Histoire de la folie à l'âge classique,1961)です。この書において、西欧という社会において、もともとは〝神の業〟と分類されていた狂気が、どうして精神病と見なされるようになったのかをフーコーは探求したわけですが、そのなかで、近代西欧社会というものが、伝統的に抑圧してきた狂気の創造的な力というものをマア、ひとつ明らかにしたわけですが、その助走にあたるのが、『精神疾患とパーソナリティー』(Maladie mentale et personnalité,1954/1962)です。短い一冊ですので、フランス語でいっぺん、訳本で数回読んでおりますが、久しぶりに再読した次第です。
狂気(病・精神疾患)を知の対象として実験室へ運び込み分析の対象へと転換していくのが近代西欧の歩みというわけですが、そこででてくるのはものの見方かをかえれば、まともな人間/まともでない人間という永遠に解決不可能な二項対立の問題をもたらしたということなのですが、その暴力性をしなやかに弾嘩したのがフーコーの筆致なのかもしれません。
さて……。
ひどい花粉症です。
昨日から雨なのですが、花粉症が悪化しております。
なにゆえに!
はい。
気がつくと花粉症ではなく、風邪をひいちまったようです。
熱はないのでラクですが、どうやら風邪のようでございます。
……ということで、
西洋の社会に限らず「病人を追放したり、閉じ込めたりするばかりで、病人のうちに自己を認めたがらないのである」のがこの世のならいでございますので、チト念入りにアルコール消毒を外側からではなく、体の内側から行い退治しようかと思います。
仕事の休憩中には、どん兵衛にかき揚げのてんぷらをのせて、すこし豪華?にやってみたのですが、あまり効果がありませんでした。
否、あまりおすすめできるシロモノでもありませんでした。
ですから・・・
チト念入りにアルコール消毒にこれから取り組もうかと思う次第です。
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精神疾患とパーソナリティ (ちくま学芸文庫) 著者:ミシェル・フーコー,中山 元,Michel Foucault |
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