兄は、真実の光のなか立ちあがれるのか、それとも、自分の信じないものに仕えた恨みを、自分とすべての人にぶつけ、憎しみのなかで滅びるのか
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イワンの病気の正体がわかってきた。<<誇りたかい決心から生まれた苦しみなんだ、ああ、なんて深い良心の呵責だろう!>> 彼が信じようとしなかった神と真実が、いまなお屈服を望まない彼の心を征服しようとしていたのだ。<<そうだ>>--枕に横になっているアリョーシャの頭のなかを、何かがかすめた。
<<そう、スメルジャコフが死んでしまったからには、もうだれもイワンの供述を信じない、それでも兄は出かけて行って証言する!>>アリョーシャは静かに微笑んだ。<<神が勝つんだ!>>ふと彼は思った。<<兄は、真実の光のなか立ちあがれるのか、それとも、自分の信じないものに仕えた恨みを、自分とすべての人にぶつけ、憎しみのなかで滅びるのか>>アリョーシャは苦しい思いでそうつぶやくと、ふたたびイワンのために祈りを唱えた。
--ドストエフスキー(亀山郁夫訳)『カラマーゾフの兄弟4』光文社古典新訳文庫、2007年。
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なにがどうというわけではありませんが、すこし凹むところが多く、「人間とは何なんだ」と叫びたくなる宇治家参去です。
わたしひとりは地獄に行っていいと正直おもいますが、その分、世界の人はすこしだけ幸福であってほしい。
ほんとにそう思うんです。
その意味ではアリョーシャなんです。
しかし地獄に行かざるをえないという意味ではイワンなのでしょう。
人間の罪性をまじまじと見つめながら、行かないようにまた今日も生きていこうと思います。
ま、こんなことをくどくどと考えているからうだつがあがらないのは承知なのですが、本来思想的格闘戦を死ぬまで遂行するには、こうした内在的な理解が必要なはずだ!
……ということで息子殿が昨日、東京まで迎えに来てくださった義母の誘いにより田舎へ帰省。
今日から細君とふたりっきり。
あるいみで、ツライ。
まあ、これも人生。
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