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「だいがくのせんせいなれますように」

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 では、帰る、と言った太左衛門へ、捨蔵はその瓜を土産にくれた。
 「早く種を蒔いたのに遅くできた瓜だが、味はわるくない」
 「よいのか、人にくれても……」
 「汁にしてもよいし、漬物にしてもよい」
 「そうか、それはうまそうだな」
 捨蔵に見送られて野路を引き返すうちに日が沈んだらしく、暮色は濃い夕闇に変わろうとしていた。
 太左衛門は捨蔵の心遣いを感じながら、しばらくは板塀の続く道を歩いた。
 (負けたな……)
 と思ったが、言葉ほど悔しさはなく、むしろ心地よい気分だった。自分は上ばかり見て生きてきたが、捨蔵は自分というものを見つめて生きてきたらしい。そもそも人間の出来が違うし、あれは本当に負け惜しみではないだろうという気がした。それにしても迂闊だったのは、五十二歳にもなるいうのに今日まで人生の値打ちを一通りにしか考えなかったことで、人の幸福のありようも人それぞれに違うということであった。人から見上げられるまま偉そうにしていい気になっていたのだから、そんなことに気付かないのも当然であった。早い話が、もしも立場が逆であったら、自分にああいう態度がとれたかどうかは怪しいだろう。
    --乙川優三郎「九月の瓜」、『武家用心集』集英社文庫、2006年。

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権力闘争の過程で莫逆の友との錬磨を乗り越え、ある程度の地位を築いた主人公が、晩節にいたりその無為を悔いることってよくあるのですが、そもそも、錬磨を乗り越え、地位を築くこともできず、晩節にいたりその無為をこえるスタートラインに立つこともできない宇治家参去です。

「人生の値打ちは一通りにしか」考えられないことはないのですが、そうでもないわけでもあります。

ですから、もう少しがんばっていこうと思う昨今です。

週のアタマに、息子殿の終業式があり、たぶん学校で作ったと思われるよーな「作品」を沢山かかえて帰宅した次第ですが、そのひとつが「将来の夢」という短冊です。

「だいがくのせんせいなれますように」

……とのことだそうな!

幼稚園のときも同じような作品(3D)を作っておりましたが、

いや……、

非常勤講師しかやっていないので、自分自身としては現在の身に甘んずるわけにもいかず、もっぺん気合いを入れていこうかと思います。

難事がすんでこのところ少しだらけていたようですので。

細君曰く

「息子殿が先に〝センセー〟にならないように」

「大丈夫だぜ、おいらは〝センセー〟と呼ばせない」

……って禅問答を繰り広げても始まりませんから、息子殿に「先を越されない」ようにまた組み立てていこうかと思います。

つうことで飲んで寝ます。

連続講義がつづき、連続勤務が続き、さすがに疲れましたので。

すみません、お月様。

いやー、しかし、息子殿には負けておられません。

ですが、できうることならば、人文科学なんてものはやってはいけないよ。
せめて社会科学。できれば自然科学でやってください。

これが親の切なる願い。

……ただ、おそろしいー、息子殿の質問が最近多いんです。

「オーストラリアは何の宗教が多いの?」

とか

「日本では何の宗教ががんばっているの?」

……とか聞いてくる始末。

れくぐれも、神学・宗教学・仏教学……そのほかもろもろの学問はやらないほうが……「いいっスよ」

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