« 「主体性という非場所が定位される場所」から、まあ、挑戦していこうではないか! | トップページ | 【覚え書】「米人気教授 東大で「白熱教室」、イチロー年収 再分配すべきか」、『毎日新聞』2010年8月26日(木)付。 »

ぼくが日本社会を見て思うのは、痛みというか、苦痛のない正さは意味のない正しさだということです

01 02

-----

村上  ぼくは昔から、あらゆる風俗は善であると思っているんです。いや、善というのではなく、ナチュラルというのかな、すべて起こるべくして起こるのであって、いい悪いの問題ではないと思っているのです。たとえばいまの若い人がぜんぜん根性がないといって怒る人がいるけれども、もしそうだとしても、それはいい悪いの問題ではなく、そうならざるをえなかったからなっているんだと思うんです。彼らが自分で選んでそうなったわけじゃなくて、そうなるべく選ばれたんだから、良い悪いという基準では考えられない。
  だから、そういう意味では、社会がどうこうというふうにぼくは批評家的に批評したくないのだけれども、一人の小説家としては、自分が感ずるものをどのように処理するかということについて、責任を感ずるところはあるのです。
  たとえば、いまぼくはこの現実の空気のなかに暴力性を感じますよね。でも、その感じた暴力性を、良い悪いを超えた地点でどのように処理していけばいいのか、ぼくに何ができるのかと考えだすと、非常にむずかしいですね。
河合  ほんとうは、そういうのを組織化する力のある人を政治家というのですけれどね。ちゃんとした社会の力になるように、かたちをつくる。それのものすごく悪いほうの例でむちゃくちゃ上手にやったのがヒトラーですね。
村上  ぼくが日本社会を見て思うのは、痛みというか、苦痛のない正さは意味のない正しさだということです。たとえば、フランスの核実験にみんな反対する。たしかに言っていることは正しいのですが、誰も痛みをひきうけていないですね。文学者の反核宣言というのがありましたね。あれはたしかにムーヴメントとしては文句のつけようもなく正しいのですが、だれも世界のしくみに対して最終的な痛みを負っていないという面に関しては、正しくないと思うのです。
  そういう意味では、僕は村上龍というには非常鋭い感覚を持った作家だと思っているのです。彼は最初から暴力というものを、はっきりと予見的に書いている。ただ、ぼくの場合はあそこへ行くまでに時間がかかるというか、彼とぼくとは社会に対するアプローチが違うということはありますが。
  河合先生は、そういう、現代における暴力性というものに関しては、やはり意識的になっておられるのですか。
河合  はい。だから、ぼくもときどき小さい暴力を使っていますよ。
村上  ウソをつくとか……(笑)。
河合  いま必死になって“蟷螂の斧”というか、それで大きい相手と闘っているとも言えます。どこで「暴力」を使ったろうかと、ずっと思っていますけれど。実際の暴力ではなく、暴力性というものを、やっぱりどこかで上手に使っていかないと、おもしろくないんじゃないですかね。
    --河合隼雄・村上春樹『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』新潮文庫、平成十一年。

-----

どうも宇治家参去です。
ほぼほぼ一週間ぶりに市井の仕事に復帰したのですが、まさに

「娑婆世界にようこそ」

……という感じで、リハビリなしでいきなりどっぷり仕事をしてきたような気がしますが、躰を動かし、頭と心で、その感を取り戻しながら業務をやりますと、まあ、それが、、

「心地悪くない」

……といいますか(はっきり言えばとっとと辞めたいのですが)、

「まあ、負けないよ」

……って不敵な笑みがこぼれてくるのが不思議なものです。

さて休憩中に村上春樹センセ(1949-)と河合隼雄センセ(1928-2007)の対談をぱらぱらと紐解いていた次第ですが、うえに引用したような感覚をどこかで忘れてしまってはならない……などと思った次第ですので、チト入力したわけです。

要するに戦争を無くすことは可能だとは思うのですが、人間生命に内在する暴力性そのものはいかなる手段を使おうとも払拭することはできない……というやつです。

外面的規範や環境の整備としての「暴力」を否定したあり方というのは論理的には可能なはずです。しかし同時に暴力を発動させてしまう生命そのものに内在する「暴力性」を払拭することは論理的に不可能です。

だからこそ、リスクを引き受けていく必要があるんだよなア~と思いつつ、市井の職場に復帰初日は何もクレームなどなかったことは幸いです。

まさに「無事これ名馬」というやつです。

痛みをひきうけつつ、人間の匂いを払拭した形ではないところからしか、本当の意味での非暴力は立ち上がらない……そんなことを思案した次第です。

ちなみに今日は19時過ぎの出勤でしたので、出勤前に天体望遠鏡にて息子殿とお月様を観察w

なんとか見ることが出来ましたが、蚊に喰われつつ、出勤したわけですが、7月に発注していた麒麟の「秋味」がいよいよ展開……といいますか、学問の仕事をしている間に発売されていたようで、早速ゲット!

一年のうちで一番大好きな「季節モノ」のビールです。

早速、スモークしたチキンハムとスライスさせた胡瓜に、桃屋のラー油でやり始めたのですが、これが・・・

「旨い」

チキンハムの桜チップが鼻孔をくすぐりつつ、麦芽高めの秋味とベストマッチというやつです。

人間は何かに影響を与えながら生きていかざるをえない生き物です。

ですから、痛みやらリスクやら、罪責性を自覚しながら生きていかなければならないわけですが、その辺の文脈をすっとばしてしまうと、チープな文言のみの思想になってしまうわけよネ……などと思いつつ、舌鼓。

さて明日もがんばるかっ!

03

村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫) Book 村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)

著者:河合 隼雄,村上 春樹
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« 「主体性という非場所が定位される場所」から、まあ、挑戦していこうではないか! | トップページ | 【覚え書】「米人気教授 東大で「白熱教室」、イチロー年収 再分配すべきか」、『毎日新聞』2010年8月26日(木)付。 »

現代批評」カテゴリの記事

コメント

世の中に生きている人間へのメッセージ

氏家先生のブログを拝見し、日頃感じることに対してブログに掲載した内容への御教示を頂きたく、アクセスをさせて頂きました。
私としては、社会問題と感じてます。

あなたは、この世の中が人間本来の生き方で進んでいるとお思いですか?

また、あなたは人間本来の後方に向けて日々努力して地球市民としての生き方に真剣に向き合い考察して行動し続けてしますか?

私も、48年間という時間を真剣に考察して生きてきたつもりです。

しかし、平和といわれる物質価の供給化に関しては、有り余るほどの物が豊富に手に入る時代と成りましたが、人間本来の心の平和と心で感じる幸福感は欠如し、偏頗な考えが横行し、置き去りに成って無くなって来てる感が酷く感じます。

物質が本当の幸せであるなら、いじめや自殺者は無くなるのではないでしょうか?

現実に起こっている事件は、漫画で見るようにリアリティを感じない心に人々の心が変化してしまった結果ではないでしょうか?

私個人の感じ方なので、このメッセージか闇に葬られるのは承知ですが・・・・・だれか一人でも受け止めて生きて行って欲しいのが

私の本来の気持ちです。

主人が幼児虐待から始まり、女性に対する執着で年齢関係なく、ストーカー行為、放火未遂、携帯サイトでの風俗への通い、それを学生時代から

見ぬふりをして援助する母親、その後もネットサイトで女性を全裸にする行動を深夜継続して続け、その様子を三歳からの娘が、目にしていた???

また、その行為の10数年続いていた・・・そして、外部の風俗にも通い続け、清潔綺麗という張り紙を信じて、大学のころから通い続け、結婚後も

10数年に渡り通い続けていた事に、15年経って知ったと云う現実です。

そして、清潔綺麗との風俗の言葉に騙され、性病に羅漢していた現実と成りました。

後悔は、先に立たずと云う現実で、私も二次的被害者となり、保健所でも

夫婦に夫婦で行っても、個人情報と云う偏頗な考えで、秘密にされ、全く

風俗に関係ない人間にも知らないうち主人が性病やHIVを移され、蔓延して行く日本現在です!(私も知らないうちに羅漢した現実を知りました)

あなたのパートナーが性病やHIVに羅漢しているか?どうかを知るすべが
無い社会で、あなたの命も物のように扱われ、防止するすべがない社会です。

不妊症が4人に一人との現状も、そのような背景から来ているにも関わらず、
知識も知らず、悪い大人が中高生に中学生は妊娠しないとの金銭の欲で、子供社会を汚染し、強いては、未来をも汚染している現状に深く警鐘鳴らす大人の少ないことにも落胆ます。(HIV、性病、10代20代の無知な世代に蔓延している悲しい現実です。営利目的、理性を無くした大人のせいで10代で利用されたまま、恨み、悲しみ、死亡している)

ネットに夜回り先生のサイトに薬漬けになり、悲しい人生を10数年の命で終わってしまった体験が載っています。

大人の方や、お子さんをお持ちの方、風俗にのめり込んでいる方、もう一度
何のために生きているのか?何の為に人間と生まれることが出来たのか?
人間とは、いかに生きるべきなのか?
真剣に考える一助にして頂きたいと思います。
10代で大人社会に殺された女の子の一生を通し、自らが行なっていることは、人の一生を責任を負うつもりで風俗に通っているのか?
性病の蔓延の一端になっていないのか?
真剣に考えて欲しいです!キッとそれは、将来の自分に関わる減じるとなります。反社会的な行動を取り、反社会的人格形成の一端になっている一歩だと云う事を忘れないで下さい!
これが、15年間必死に主人に関わり、胃潰瘍も胃がんも子供に対する幼児虐待を経過し、更に主人は、ストーカー風俗通いに対する性癖ともなってしまった事から抜け出せない現状です。
本人事態が、反社会性人格障害と癖が付き、変革にはその時間だけ掛かり、不幸です。
もう一度、自らの思考が人間本来の理性ある人間として欠落が無いか?
考えて欲しいです!また、自分の母親や姉妹!娘がその行為を行ない、その相手として現われても、平然とその行為が出来るのか?
他人ごとでは無く、身近にもこの事を話題として、風俗に関係する物は、人間社会に不可欠なのか?どうか?頭では無く、理性と云う心で考えて欲しいです!

今の社会に対してのカルチャーショックで、自分の男性に対する信じる気持ちが湧きません。

隠れ風俗という実態も、(看板も掲げない通常のマンションの一室にネットでお金目当てで集まる女性、実態が分からず若い人と性行為を出来ると群がる女性)

現場の責任者に聞いて、相手も判らず、相手をする人性病に羅漢している人も判らない女性を求めて群がった男性と当事者の責任で云う事で、女性も男性も商品であり、それを元に何故金儲けをしてはいけないのか?という現実には熟慮も何もありませんでした。
性病検査も潜伏期間が3カ月以上あるので、その期間にかかって判明しない時期の検査では陽性反応しか出ず、そのことを信じた男性なり女性が信じて性行為を行なえば、羅漢ししっかりし正しい説明の下での検査でなければ、羅漢していても陰性の結果が出ます。それで、風俗に行かない妻が掛かり、子供にも羅漢しても知らずに妊娠や病気の発生で気付いたり、性病から他の病気に変異して、性病からの病気とは知らない第三者が苦しむと云う現実があります。しかし、今の医学ではそこまでの費用が掛かる検査は行ないません!
第三者にならない為にも、同じような身近の問題にもっともっと目を向け、
享楽が優先の社会の変革をまず一歩から始めませんか?

若年層にエイズや性病が蔓延している現状にも全く無知で、性病が全く関係無い人に羅漢することや死の病気や不妊症に成る事も認知が無く金に対する執着しかありませんでした。

また、警察や役所にもその現実を伝えても、看板も掲げてなく、携帯やネットで募集している状況では皆目見当が付かなく、放置するしか無いと云う消極的で、どれも形だけの公務員の自分の地位や名誉に執着している現状でした。それは、精神科の医師にしても同じでした。大人である私でさえ主人にまつわる事で落胆で、ましてや

子供未来など、夢を見ようと云っても、このような大人が大挙している世の中では、大人さえゲンナリなのに、子供に夢を見させることは不可能に近い・・・

どなたか人間としての正しい現実に変えうる方法の行動実績を知ってい方がいらっしゃいまたら、理性を併せ持った人間社会に変える御教示を宜しくお願いします。

夜回り先生の行動をビデオで拝見しました。大人へは、もっと法的に処罰する方法は無いのでしょうか?

風俗を需要と感じている男性社会の人権無視の感覚をどう変える事が出来るでしょうか?

女性を商品として人権無視している現状や、相手が未成年だと確認している方法も無い状況下に何も罪悪感を感じずに通う男性・・・

女性を金で買うと云う行為は、人権無視に当たると悩まない男性陣の横行に社会の崩壊に繋がっている危惧感がない!日本に警告をしたいです!

煙草が発がん物質と取り締まる前に、少子化が風俗から一般庶民に水面下にドンドン広がっている現状に真剣に目を向けるべきと強く要望します。

あなたも知らないうちにHIV,や性病に侵され、性病に侵され二次的な病気への症状に変化しているだけかも知れません・・・

今の医学は連続的な病気の変化と変遷など理解も説明もしてませんので・・・まして男性社会ですから。。。また、その追求には莫大な費用がかかるので
行っていないのが現状でしょう。。。この狂った世界を人間本来のこころを人間性を取り戻す社会に何かを行ない変えるこが出来ないか念願に置きながら身近の人間への対話に日々頑張っています。。。
子供たちの孫たちの未来へ人間と生まれたことへの本来の意味を考えることへの共感をされる方からご連絡をお待ちしております。。。

下記はトラックバックして頂いた方からコメント紹介です。男性側からと倫理的な考察からの御教示をお忙しいとは思いますが、お願いします。

トラックバックありがとうございます。
おかしいことをおかしいと言い続けることは大事だと思いました。
言っても無駄・仕方ないと誰も声をあげなくなったらとんでもないことになると思います。
どんな問題も、法律が複雑であったり、あらゆる関係者の癒着も否定できません。
偽装ラブホテル問題については、各地住民の方が子供や住環境のために、行政に声をあげるなどの活動を使命感でされています。
そのうち分かってくれる役人や議員もいて、世間も少しずつ変わってくると思います。
popiさんの声もいつかどこかに届くと思います。
2010/7/17(土) 午後 1:12 [ pin*no*o*ochann ]

御返事ありがとうございます。どうしても、まだまだ男性社会が優勢で女性を商品と扱う風潮が強く感じますが、ドンドン声を上げて、高度文化社会の腐敗の現状をどうにか人権をしっかり考える社会に変わるよう、子供の未来の社会が人間は考える脚であると云うように人間本来の理性が発揮される社会に少しでも変わるように頑張って参りたいと思います。風俗が文化と扱われる社会が人間本来の純粋さで物事を見れる人間の集団に変わるよう深く願います。
そして、子供たちが未来に希望と夢を抱き、生き生きと生きれる社会の創世を願って頑張って参りたいと思います。
そして、人の心が病んでいる人が増え続け、自殺者が年々増え続け、毎日のように人身事故が絶えず、電車の遅れの度にまた、人身事故かと当たり前のように、そのニュースに驚きも感じなくなりつつある偏頗な社会から、他者を思いやれ、本当の平和社会、心の安穏を感じれる社会に変わって行くよう願いつつ頑張って参りたいと思います。
猛暑の毎日ですが、お身体をお大事に偽装ラブホテル撲滅の為に頑張って下さいね\(^o^)/

投稿: 星屑の妖精 | 2010年8月31日 (火) 10時28分

星屑の妖精様

長文のコメントありがとうございます。

ゆっくり読ませて戴きました。

また考える糸口を沢山頂き、ありがとうございます。

ご返信はまとめて、8/31付の記事のコメントの方へまとめてご返信いたします。

投稿: 宇治家 参去 | 2010年8月31日 (火) 12時46分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ぼくが日本社会を見て思うのは、痛みというか、苦痛のない正さは意味のない正しさだということです:

» Twitter Trackbacks []
[続きを読む]

受信: 2010年8月26日 (木) 17時07分

« 「主体性という非場所が定位される場所」から、まあ、挑戦していこうではないか! | トップページ | 【覚え書】「米人気教授 東大で「白熱教室」、イチロー年収 再分配すべきか」、『毎日新聞』2010年8月26日(木)付。 »