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【覚え書】「異論反論 特捜強化と全面可視化を 寄稿 佐藤優」、『毎日新聞』2010年9月29日(水)付。

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異論反論 寄稿 佐藤優
証拠物改ざん容疑で検事が逮捕されました
特捜強化と全面可視化を

 9月21日、最高検察庁が大阪地方検察上特別捜査部の前田恒彦検事を証拠隠滅の疑いで逮捕した。
 一部に特捜検察を解体し、検察から捜査機能をはく奪すべきであるという議論があるが、筆者は反対だ。いかなる時代、いかなる国家においても政治犯罪は存在する。日本の場合、戦前の治安維持法が拡大解釈されていった反省から、政治犯罪は存在しない建前になっている。そこで政治的に有害な人物を排除する場合には、政治犯罪を経済犯罪に転換して処理する文化が生まれた。それだから政治家は収賄や政治資金規正法のようなカネにまつわる犯罪で摘発される。
 もっとも、これは第三者的に突き放してみると、特捜検察が「時代のけじめ」をつけるための政治的機能を果たしているということで、実際に捜査に従事している検事や検察事務官は、自らが政治的に中立な公益の番人であると信じている。自分の姿を自分で見ることはできないので、これは仕方のないことだ。
 検察が捜査機能を失うと、その役割を必然的に警察が行うことになる。警察は行政機関だ。そうなると時の権力の意向を直接反映し、かなり露骨な政治的捜査が行われる危険がある。それよりも行政から制度的に一定の距離を保つ検察に委ねたほうがました。

忘れられない西村検事の言葉
 筆者が東京地検特捜部に逮捕され、取り調べを受けた経験からすると、特捜検事は仕事熱心でまじめだ。筆者を担当した西村尚芳検事(現さいたま地方検察庁公判部副部長)は、自分を突き放して見ることができるモラルの高いインテリだった。この検事から言われた「調室の中で僕たちは絶大な権力をもっている。この権力を使って何でもできると勘違いするやつもでてくる。怒鳴りあげて調書を取れば、だいたいの場合はうまくいく。しかし、それは筋読みがしっかりしているときだけ言える話だ。上からこの流れで調書をとれという話が来る。それを『ワン』と言ってとってくるやつばかりが大切にされる。僕は『ワン』という形で仕事をできないんだ」(拙著「国家の罠」新潮文庫)という言葉がいまも鮮明に記憶に残っている。
 しかし、すべての検事が西村氏のような高いモラルを保てるわけではない。密室の中ではどうしても無理をする。そして、物証を改ざんすることに罪の意識を感じなくなる。検事が無理な取り調べをすることを防ぐためにも、特捜事件については直ちに全面可視化を導入すべきだ。特捜検事の労働は過酷だ。特捜部の定員を増やし、予算を増額する。そして特捜検事に仕事に直接関係する以外の本を読む時間ができるようにする。視野と強要が広がれば、おのずから無理な取り調べが日本の社会と国家に与える悪影響を検事が強く意識するようになり、事態が改善すると思う。

さとう・まさる 1960年生まれ。作家。元外務相主任分析官。02年に背任容疑などで逮捕され、執行猶予付き有罪確定。著書に「国家の罠」など多数。「久しぶりにギリシャ語聖書をひもといて、新訳聖書に関する本を書いていました」

    --「異論反論 特捜強化と全面可視化を 寄稿 佐藤優」、『毎日新聞』2010年9月29日(水)付。

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