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「ノーベル賞受賞ですか。すばらしいと思いますわ。私も、去年新人賞をもらった時、すごくうれしかったですし」

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 新聞にしろ、週刊誌にしろ、テレビにしろ、ラジオにしろ、それらにあふれている論調は、ノーベル賞の変質を憂うだの、平和の意味の多面性だの、佐藤栄作の受賞工作を暴露するだの、それはそれなりのものだろうが、栄作の笑顔の後からついてきた批判ばかりだった。それらは、あたかも、軍需産業に対して平和産業を称え、資本主義に対して賃上げを要求しているだけの、三流革命新知識人の無力さを象徴しているようであった。
 その時、ある新聞に、百恵嬢のコメントを見つけたのだ。まだ、デビューして一年になるかならぬかの、禍々しいまでの色気を炸裂させていた百恵嬢は、佐藤受賞について、こう言ったのである。
 「ノーベル賞受賞ですか。すばらしいと思いますわ。私も、去年新人賞をもらった時、すごくうれしかったですし」
 お見事!
 この小娘は、たったの一言で、近代保守政治エリートの最大の栄誉を粉砕したのである。自分たちがあれこれ批判したつもりになっていた佐藤栄作がノーベル平和賞を受賞したとたん、雁首を並べて、らちもないコメントしか出せなかった駄目知識人どもの中で、百恵嬢の発言は、ぎらりと輝いたのだった。
    --呉智英「百恵の一言で、戦後保守エリートの栄誉は粉砕されてしまった」、『大衆食堂の人々』双葉文庫、1996年、71-72頁。

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読んでいて吹いてしまった。

斯くありたいものです。

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