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たえず実現を約束しながらけっして実現することのないような、不可能な理想というものは存在しない

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 人間がほとんど品物のように見なされ、土地に所属して土地財産の一部を構成し、土地とともにに売り買いされている国において、財産にたいする、偶像崇拝的な観念がすこぶるわずかしか発達していないことは一見すると奇妙なことに思われるかもしれない。わが国では所有権は頑強に擁護される。しかし、権利としてではなく、獲得としてである。かかる権利の有効性と正当性とにたいする確信をうえつけることは困難であった。かかる権利の不合理なることは、農民を所有している地主にとっても、おのれの所有地の所有者であない農奴にとっても、ともに明らかなことであった。ひとは地主の権利の起源がかなり不明確なものであることを知っている。ひとは多くの勝手な方策、警察的な方策が農耕的ロシヤをすこしずつ貴族的ロシヤの権力に隷属せしめてきたことをよく知っている。それゆえに農耕的ロシヤを解放すべき別の手段を考えることは可能であった。
 はっきりと定められた法律的概念の欠如そのもの、もろもろの権利の不明確性が一層所有権の思想の確立をさまたげ、それが一定の形をとることをゆるさなかったのである。ロシヤの国民は共同体の生活だけを知っていた。彼らは共同体との関係においてのみおのれの権利と義務とを理解していた。共同体のそとには彼らの義務をみとめず、ただ暴力のみを見る。彼らがそれに服従するのはただ力に服従しているだけである。彼らは立法の一部があきらかに構成を欠いているのを見て、その他の部分をもさげすむようになった。裁判における完全な不平等が法律にたいする国民の尊敬の念をその芽生えのうちにつみとってしまった。ロシヤ人は、それがいかなる階級の者であっても、罰せられるおそれさえなければ、必ず法律を破る。政府もまたこれと全くおなじことをしている。これは現在にとってはつらく悲しいことである。しかし、未来のためには、それはすこぶる大きな長所となる。
 ロシヤにおいては目に見える状態のうしろに、現存秩序の神化であり変形にほかならぬような、目に見えない状態というようなものは存在しない。たえず実現を約束しながらけっして実現することのないような、不可能な理想というものは存在しない。最高権力がわれわれのまわりにはりめぐらしているところの柵のうしろには何ものも存在していない。ロシヤにおける革命の可能性は帰するところ物質的な力についての問題である。まさにこのことが、さきにのべた諸原因のほかに、わが国を社会的なよみがえりのための最良の地盤たらしめている。
    --ゲルツェン(金子幸彦訳)『ロシヤにおける革命思想の発達について』岩波文庫、1974年、211-213頁。

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これはひょっとするとロシアだけの話ではないかもしれんなア。
最近、疲れとストレスで安息がとれません。
覚え書のような素描ですいません(涙

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