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覚え書:「記者の目:日本初「原子の灯」東海村の挑戦=大久保陽一」、『毎日新聞』2011年10月28日(金)付。

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記者の目:日本初「原子の灯」東海村の挑戦=大久保陽一

 今から54年前、日本で最初に「原子の灯」がともった茨城県東海村が、東京電力福島第1原発事故後、大きく揺れている。99年に「ジェー・シー・オー(JCO)臨界事故」を経験した村上達也村長が、同村に立地する日本原子力発電東海第2原発の廃炉に言及するなど「脱原発」姿勢を鮮明にすると同時に、村を原子力の安全研究拠点にしようという構想を打ち出したのだ。原発問題は「推進派VS反対派」の二項対立に陥りがちだが、脱原発を目指しながらも、そのために当面は原子力と共存する道を歩もうとする村上村長の姿勢に、野田佳彦政権がとるべき原発政策のヒントが隠されていると思う。

 ◇「先人を愚弄」
 「福島原発事故が起きて、何も変わらないということにはならない。我々は今ごろ避難していたかもしれないし、ふるさとを失ったかもしれない。震源域がもう少し南にあれば、同じ高さの津波が来たはずだ。原発だけに依存するまちづくりには限界がある」
 10月14日、同村議会原子力問題調査特別委員会。村上村長は、その3日前に細野豪志・原発事故担当相と面談して東海第2原発の廃炉に言及した真意をただす議員にこう答えた。議員からは「村長は初当選時、原発推進ではなかったか」などといった発言も相次いだ。同委の村上邦男委員長は記者団に「原発のおかげで発展した村が真っ先に脱原発を言うのは、先人を愚弄(ぐろう)している」と批判した。発言議員7人中、村長を評価したのは共産党議員1人だった。
 村長の発言の背景にあるのは「ふるさと」を思う素朴な心情だと思う。震災直後からインタビューや記者会見の席で向き合うたび、必ずこう口にした。「ふるさとが失われてしまったら何もならない」
 3月11日、東日本大震災で東海第2原発は外部電源を失い、最大推定5.4メートルの津波に襲われた。ポンプ室の防潮壁を半年前に高さ6.1メートルにかさ上げしていたが、工事用の穴から海水が入り、発電機3台中1台が停止。冷温停止まで3日以上かかった。津波が福島と同レベルの高さ15メートルだったら、「ふるさとを失ったかもしれない」のだ。

 ◇村財政の3割
 多くの村議らが村長発言に反発する理由は経済問題だ。村人口3万8000人の3分の1が原子力関連の仕事をしているか、その家族と言われる。村の一般会計歳入約200億円(09年度決算ベース)のうち、原子力関連は約3割を占める。「脱原発にかじを切れば、経済面で影響が出るのは明らか」というわけだ。
 これへの一つの答えとして村上村長は「原子力センター構想」を打ち出している。「東海村が原子力の安全研究と人材育成の世界的な役割を担う」ことを目指すもので、(1)人材育成(2)平和・安全規制の基盤研究(3)世界最高水準の大強度陽子加速器施設(J-PARC)を活用した最先端研究(4)政策提言--に取り組む。村上村長は「これらこそ東海村が(原子力発祥の地としての)ハブ(拠点)機能を担うにふさわしい」と強調する。
 構想の柱であるJ-PARCは原子核レベルで物質を解明する施設。新薬開発などの医療分野、高機能リチウムイオン電池開発などの産業面に加え、素粒子物理学をはじめとする基礎研究への貢献など、多方面に成果が期待できる。村長が「構想」のモデルとしたのも、J-PARCと同様に加速器を用いた研究をしている欧州合同原子核研究所(CERN)だ。スイス・フランス国境にあり、実験施設のほかオフィスビルや宿泊施設、図書館、食堂などさまざまな施設が整備され、地元雇用も生んでいる。
 もう一つの柱、安全規制の基盤研究でも、「核不拡散・核セキュリティ総合支援センター」が今年2月オープン。今月はアジアを中心とする14カ国の政府機関関係者らによる核物質防護に関するワークショップが行われている。さらに東海原発(98年運転終了)は、商用原発として国内で初めて廃炉作業が01年に始まった。ここで蓄積される廃炉技術は、全国で活用できる。
 野田首相は9月の所信表明演説で「脱原発依存」は「可能な限り」にとどめるとして、脱原発へと向かう国内外の世論を失望させたが、思い直してほしい。具体的には、脱原発を目指すとの長期的目標を明確にし、東海村をモデル地区として「脱原発特区」と位置付けてはどうか。

 ◇自立を目指して
 確かに東海村は原子力関連の研究機関などが集積し、他の原発立地自治体と条件は違う。しかし、各地域がそれぞれの「資源」を使って自立しない限り、脱原発は実現できない。国策としての原子力を受け入れた東海村が、脱原発と共に経済的自立を目指そうとしていることを、しっかりと受け止めたい。(水戸支局)
    --「記者の目:日本初「原子の灯」東海村の挑戦=大久保陽一」、『毎日新聞』2011年10月28日(金)付。

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