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覚え書:「これが言いたい:自治体の復興事業に民間のノウハウを生かせ=大西健丞」、『毎日新聞』2011年11月3日(木)付。

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これが言いたい:自治体の復興事業に民間のノウハウを生かせ=大西健丞

 ◇「知の協業」へのシフト必要--公益社団法人Civic Force代表理事・大西健丞
 第3次補正予算案が臨時国会に提出され、大震災から8カ月近くを経てやっと復興に向けた動きが本格化する。予算案にはインフラ整備や中小企業向けの融資などが盛り込まれ、待たされ続けた被災地の期待は大きい。だが、肝心なのは、具体的な復興事業に地域の事情や住民の意向をどこまで反映できるかだ。
 「Civic Force」が支援活動をしている宮城県気仙沼市では、高さ5~10メートル超の防潮堤を沿岸に建設する計画が示されたが「観光資源でもある港の景観を壊し、暮らしを海から遠ざける」と反発が出て、住民を二分する騒ぎになっている。土地のかさ上げや高台への集団移転も、利害が複雑にからみ、調整は困難をきわめそうだ。
 まちづくりをゼロから再スタートさせる難しさは並大抵ではない。従来の土建事業の枠組みと発想だけで対処しようとすれば、現場の実感との乖離は広がるばかりだ。
 本来なら基礎自治体と呼ばれる市町村が住民の声を吸い上げ、地域の実情に合ったオリジナルの復興策を練り上げるべき場面だが、どうも心もとない。もともと日本の基礎自治体は国や県への従属性が強く、決められた事業枠に当てはめることは得意でも、本格的な政策立案能力をもった人材が育ちにくい。加えて震災後は職員が通常の何倍もの業務を抱え、余力がない。
 このような状況下で私たちNGOを含む民間がなすべきは、被災地のまちづくりについて、住民や基礎自治体の側に立ってさまざまな知恵を出し、ノウハウや人脈を提供することだと思う。自治体の仕事の隙間を埋める「草の根」の活動だけでなく、政策の提言や調整の段階から知的な貢献をする。緊急期の物資配布やがれき撤去といった実動的な支援から、「知の協業」へのシフトである。
 たとえば、PFI法や再生可能エネルギー法を活用して民間資本を呼び込み、太陽光パネルを備えた新タイプの復興住宅を建てる。売電収入を「配当」とすることで低コスト化を図り、ローンを抱えた世帯や社会的弱者に優先的に供給する。あるいは、自動車会社が本業を生かし、車のリースや修理技術の提供を通じて、地域に合ったカーシェアリングのしくみを構築する。外部の人材群が、手薄な自治体の政策立案を支援することで、そうした民間のダイナミズムをまちづくりに効果的に取り込めるのではないか。
 海外の紛争地などの復興でも、オックスファム(英)のような一流のNGOは中・長期の地域開発政策に深くコミットしており、調査・分析や提言は驚くほど質が高い。残念ながら私たちはまだその域に及ばないが、豊富な蓄積をもつ民間シンクタンクと組んで知見を引き出すことで、東北の被災地に対し同様の貢献をしたいと考えている。

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 この秋、復興計画づくりを担う自治体の関係者から「防潮堤の高さや土地の買い上げの有無を国が決めてくれないと、計画を詰められない」といった言葉をよく聞いた。補助率の上乗せなど、国の政策のさじ加減ひとつで計画の実現を左右される現場の苦悩が垣間見えた。
 一方で予算案には、自治体の自由な裁量で復興事業に使える交付金が盛られた。裏を返せば、構想力や政策立案力しだいで復興の質に大きな差がつくことになる。「押し付けの復興事業」という言い訳は通用しない。民間との「協業」で知恵とリソースを引っ張り込む貪欲な発想を、自治体の側にも期待したい。

人物略歴 おおにし・けんすけ 英ブラッドフォード大院修了。国際協力NPO「ピースウィンズ・ジャパン」代表理事。
    --「これが言いたい:自治体の復興事業に民間のノウハウを生かせ=大西健丞」、『毎日新聞』2011年11月3日(木)付。

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