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覚え書:「記者の目:「アジア一体化」掲げる釜山映画祭=勝田友巳」、『毎日新聞』2011年11月11日(金)付。

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記者の目:「アジア一体化」掲げる釜山映画祭=勝田友巳

 韓国・釜山国際映画祭を、10月に取材した。05年に初めて訪ねてから4回目だ。「アジアのハブ(拠点)」を自任する釜山は、「映画によるアジア一体化」という大構想を掲げている。大言壮語と思っていたが、来るたびに少しずつ態勢が整っていく。

 ◇日韓連携で独自の感性発信を
 今回は、映画祭専用施設「映画の殿堂」が完成、本拠地を確保していた。釜山の勢いを感じながら、日韓映画界が関係を密にして世界に作品を送り出せれば、難航中の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に先駆けて映画がアジアを一つにするかも……と思えてきた。

 ◇専用施設を建て各種支援も充実
 第1回釜山国際映画祭の開催は、96年。年々規模を拡大し、今回は上映作品307本、入場者数約19万7000人。「アジア映画の発信地となる」「新人の発掘、育成」という目標をブレずに掲げたことが、成功の大きな要因だろう。アジアと自国の作品や才能を丹念に紹介し、アジア映画のショーケースとして世界の注目を集める。
 この間、99年に映画やテレビ、CMなどの撮影の便宜をはかる釜山フィルムコミッション(FC)が、アジアでいち早く発足し、他国に設立を働きかけた。今では17カ国46団体がネットワークを作っている。市内に撮影スタジオや仕上げ作業施設も建設して映像都市構想を推し進めた。
 「映画の殿堂」は国と釜山市が約1678億ウォン(約119億円)を投じた、4000人収容可能な屋根付き野外劇場や上映設備などを備える豪華施設。映画祭成功の証しであり、釜山の象徴だ。国の映画支援組織「韓国映画振興委員会」もソウルから移転することが決まっている。映画製作の川上から川下まで、釜山にそろうことになる。
 次に目指すのは、アジアの複数の国の出資で製作された、多国籍映画のヒットである。そのために税制優遇措置など手厚い支援策を用意し、仲立ち役を買って出る。これまでも映画祭を通じて人脈を築き人材を育ててきた。
 欧州では支援基金「ユーリマージュ」もあり、合作は当たり前だ。釜山FCのオ・ソックン委員長は、そのアジア版を思い描いているという。「ハリウッド、欧州と並んで、アジアは世界映画界の極になれる」と話す。
 釜山に比べて、日本の映画界の反応はもう一つ鈍い。日本でも、特に独立系の製作者が、海外進出を模索してきた。しかし個別の挑戦が主で、全体として後押しする雰囲気ではなかった。映画の市場が小さい韓国が国外に活路を求めざるを得ないのに対し、そこそこ自足できる日本では切迫感がない。日韓に比べ、他のアジア諸国の映画環境整備はまだまだだ。

 ◇国際合作増やし共に未来描こう
 日韓など、これまでの合作が、興行的に期待はずれだったことも足かせだ。ここ10年で30作以上がさまざまな国際合作を試みたものの、ヒットは少ない。釜山に先行してアジア代表を目指した「東京国際映画祭」も、アジアと欧米の間で進路が定まらぬうちに、国際的な影響力では釜山に水をあけられた感がある。
 ただ、だからといって、釜山の構想を絵空事と片付けるのは惜しい。
 国境を超えて人材とアイデア、資金の交流が進めば、ハリウッドとも欧州とも違う、アジアの感性を磨いた映画ができそうだ。大きな視野を持った人材も育つ。配給網を自国の外に拡大することで、一国だけでは製作が困難な作品に資金が集まり、上映機会も増えて資金回収しやすくなる。海外から撮影隊が来ればロケ地は経済的に潤うし、撮影地が名所になれば観光客も増える。ひいては国と国との相互理解が進み、経済的、政治的な垣根も低くなる--。釜山から見える映画によるアジア一体化構想の青写真だ。
 オ委員長は「中心となるのは韓国と日本」と期待する。日本もようやく、文化庁が「国際共同製作映画支援事業」を始めた。日本と海外の資本で製作される作品が対象で、本年度は5作品に合計約1億7600万円を支援する。ドラマでも放送中の「僕とスターの99日」など日韓スターが共演している。釜山映画祭のイ・ジョングァン委員長は「かつて韓国は日本文化に憧れ、日本では韓流ブームが起きた。芸術、文化の面で相互理解は進んでいる」と話す。機は熟してきたのではないか。
 TPPは利害が複雑にからんでいるが、映画によるアジア一体化なら経済面でも芸術面でも、そして観客にとっても損はない。合作支援強化など、釜山の構想に精いっぱい加勢したらどうだろう。アジアの未来を一緒に描くのも、映画的なロマンではないか。(東京学芸部)
    --「記者の目:「アジア一体化」掲げる釜山映画祭=勝田友巳」、『毎日新聞』2011年11月11日(金)付。

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