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覚え書:「中学公民教科書:沖縄・八重山問題 混乱の背景に法律の不備」、『毎日新聞』2011年12月5日(月)付。

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中学公民教科書:沖縄・八重山問題 混乱の背景に法律の不備

 沖縄県八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町)で来年度から使われる中学校の公民の教科書を巡り、混乱が続いている。教科書無償化には地区内で統一する必要があるが、採択した教科書は3市町間で異なったまま。文部科学省が当初地元に求めていた11月末までの一本化はできなかった。こじれている背景を探った。【三木陽介、木村健二、鈴木美穂】

地区内で統一するか? 各市町村教委の採択か?
 混乱が始まったのは8月23日にあった「八重山採択地区協議会」。教科書は4年に1度見直され、中学は来年度に更新時期を迎える。八重山地区では各教科の教科書を協議会が選んで3市町教委に答申。それを受け各教委が最終決定する。
 この日、公民教科書は協議会委員の投票の結果、育鵬(いくほう)社5票、東京書籍3票の多数決で育鵬社に決まった。同委員は3市町教育長、3市町教育委員各1人、保護者代表、学識者の計8人で構成される。次の数学の選定に入ろうとした時、保護者代表委員の八重山地区PTA連合会長が異議を唱えた。
 「なぜマイナスのものが選ばれたのか」
 「マイナス」というのは、協議会が任命した調査員による事前調査の結果だ。公民は、教師3人が調査を担当し、7社の中から「推薦教科書」として、東京書籍と帝国書院を選んだ。育鵬社については14カ所の問題点を指摘しており、同連合会長は「調査結果軽視」と疑問を投げかけたのだ。
 これに対し、協議会会長の玉津博克・石垣市教育長は「調査員の報告はあくまでも参考」と反論。連合会長は食い下がったが、玉津教育長は「もう投票は終わりました」と打ち切った。
 その後、混乱は拡大の一途をたどる。石垣市と与那国町は協議会の答申通り、育鵬社の採択を決めたが竹富町は東京書籍を選んだ。
 慌てたのは、各教委を指導・助言する立場にある県教委だ。教科書無償措置法は採択地区内で同一の教科書を使うよう定めている。これまで同一地区内で各教委の採択が割れたことはなく、今回のケースは「全国初」(文科省)だった。
 県教委は3市町に再協議を要請。9月8日に3市町の全教育委員13人による会議が開かれた。多数決で一転、東京書籍が採択されたが、石垣市と与那国町は「有効なのは8月23日の決定だ」と反発。行きづまった状態の中、今度は文科省が乗り出し、さらに深刻化する。10月26日に「収拾案」として、竹富町に自費購入を促したからだ。同町の慶田盛安三教育長は「無償配布は義務教育制度の根本だ」と猛反発した。
 竹富町教委の言い分はこうだ。「協議会の答申に拘束力はない。採択権は町側にある」(町教委幹部)。実は、教科書を巡ってはもう一つ法律がある。地方教育行政法。それには、採択権限は市町村教委にあると定めている。
 二つの法律が存在する現行制度では、「同じ採択地区内の市町村教委の間で考えが違った場合の解決の手立てはない」という矛盾を抱えているのだ。
 広域採択が制度化されたのは無償措置法施行の1963年。それまでは学校単位で教科書を決めることもあった。教科書の大量発注で経費を減らしたり、教員が共同研究しやすくするのが狙いだったが、教科書問題に詳しい高嶋伸欣・琉球大名誉教授によると、採択への日教組の影響力を弱めるという政治的意図もあったという。
 高嶋名誉教授は「今まで問題が表面化しなかったのをいいことに文科省は放置してきた。採択は元来の学校単位に戻すべきではないか」と提案する。ただ八重山地区の問題に関しては「話し合いで決着を図るしかない」としている。
 中川正春文科相は、制度の不備について「確かに二つの法律が重なり合って解釈が難しい。法律の整理はしていきたい」と話し、将来的に見直す考えを示している。ただ、今回の八重山地区の問題に関しては「法的に解釈のできる範囲の中で収めていくしかない。法律改正は間に合わないので次の段階になる」と現行制度内での収拾を図る方針を強調。年末まで期限を延ばして決着を求めている。

八重山地区の教科書採択を巡る動き

8月23日 八重山採択地区協議会が来年度から中学校で使う公民教科書に育鵬社版を多数決で採択
  26日 石垣市と与那国町が育鵬社版を採択
  27日 竹富町が東京書籍版を採択
9月 8日 沖縄県教育委員会の求めに応じて開かれた3市町の教育委員の全員協議が、多数決で東京書籍版を採択
      その後、石垣市と与那国町の教育長が「全員協議は無効」の文書を文部科学省に発送
  15日 文科省が採択地区内で一本化するよう県教委に通知
10月26日 中川正春文科相が衆院文部科学委員会で、東京書籍版を採択した竹富町を無償措置の対象外とし、自費購入を促す方針を表明
11月28日 県教委の呼びかけで3市町教委が意見交換したが、物別れに
12月 1日 森ゆうこ副文科相が竹富町の対応について12月末まで報告期限を延長する方針を表明
    --「中学公民教科書:沖縄・八重山問題 混乱の背景に法律の不備」、『毎日新聞』2011年12月5日(月)付。

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