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覚え書:「記者の目:大震災「支援される気持ち」=前田洋平」、『毎日新聞』2011年12月2日(金)付。

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記者の目:大震災「支援される気持ち」=前田洋平

 ◇負い目感じる心情に配慮を
 東日本大震災の発生直後、3カ月、半年と宮城県に出張して避難所や仮設住宅で被災者に取材し、「支援される側の気持ち」という問題に気づかされた。私が書いた記事を読んだ方たちから支援が届いた男性がいる。励ましになっただろうかと再訪すると、「心苦しい」と言うのだ。その心情を知ることは、今後も続く被災者支援を考える手がかりになると思う。
 津波で家族全員を失い、宮城県山元町坂元の避難所に身を寄せてハローワーク通いを続けていた会田正始さん(64)のもとに6月下旬、小包が届いた。差出人の名に覚えはない。中には、タオルなどの支援物資とともに、会田さんの苦境を伝える記事(本紙東京本社6月15日夕刊)のコピーと「がんばってください」とのメモが入っていた。その後も、支援物資は20個ほど届き、大阪と名古屋の女性は現金5000円も送ってくれた。

 ◇激励に感謝
 一連の過程で心の交流も生まれた。横浜市の女性は、自らの大切な人を自殺で失った経験を記し、家族を失った会田さんに寄り添う内容の手紙を添えた。会田さんがお礼のはがきを送ると、「仕事を見つけたら教えてほしい」と返信してくれたという。「勇気づけられた。仕事を見つけたらまた連絡しようと思う」と、泣きながら会田さんは語った。女性に報告する日を心の支えに職探しを続けている。
 だが、会田さんは複雑な心情も漏らす。
 生活は苦しく支援はありがたい。それでも、受け取りづらい気持ち、言葉ではうまく表現できない居心地の悪さが胸にわく。周囲の避難者の視線も突き刺さる。全国から寄せられた善意が自治体などを通じて公平に分配される義援金とは異なり、物資や現金を直接届けられたことに、特に負い目を感じる--というのだ。「全く知らん人がさ、気にかけてくれるのはありがたいよ。だけど、素直に受け取れん自分がいるのね……」
 相手を知る手掛かりは小包や封筒に記された住所と名前のみ。会田さんが礼状を送っても返事がないことが多い。もちろん、先方にもいろいろ事情があるだろうが、皆が横浜市の女性のように手紙のやりとりになるわけではない。会田さんは「自分は与えられるだけの存在なんだな」と落ち込むこともあるという。

 ◇自分で稼ぎたい
 立ち直りの歩みは被災者ごとに異なる。だが、公的な援助やボランティアの助けなど、さまざまな支えが年単位で必要なことは間違いない。記事をきっかけに個人的な支援を受けた会田さんのような経験はなくとも、一方的に支援されることへの戸惑いを感じる人はいる。
 50代の娘と2人で山元町の仮設住宅に暮らす早川元子さん(75)も「ありがたいけど、お礼を伝えることもできない。このまま、もらい続けてしまっていいのだろうか」と”負い目”を語った。福島県浪江町から山形市の借り上げ住宅に避難している女性(42)も「半年以上たったのに、ほとんど支援物資と義援金だけで生活が成り立っているのは情けない。自分で仕事をして稼いだお金で物を買わないと、生きている実感もわかない」と漏らす。
 こうした心情について、ボランティア研究が専門の仁平典宏・法政大准教授(社会学)は「支援する側とされる側が対等の関係とは言えず、支援される側を『孤独』に追いこむことになる」と分析する。どのように配慮したらよいだろうか。横浜市の女性と会田さんのように双方向で心通わすことが理想だけれど、多少でも近づける代替手段を考えてみた。

 ◇恥じる必要ない
 一つには、支援を受け続けてよいのだと、支援する側から伝え続ける「カウンセラー」役が必要だと思う。被災者と顔を合わせる行政職員や支援団体スタッフが好適だろう。支援を受け続けるのは何ら恥じることではないと、繰り返し伝えてほしい。
 もう一つ、被災者の感謝の言葉を私たちが報じることも大事だと思う。会田さんが「支援は本当にありがたかった。私がそう思っていることを新聞に書いてください」と語った表情は胸のつかえがおりたようにホッとしていた。その顔が忘れられない。他の被災者からも何度も同じように頼まれた。そうした思いを、間接的にでも支援する側に届ける役目を、記事は担える。毎日新聞の「希望新聞」はこうした試みでもある。
 支援法制の整備が進み、自治体によっては復興計画もできた。そうした大きな流れの中では、ささやかな問題かもしれないが、法律や制度、何より善意に基づく支援が、被災者の心情に配慮するものであってほしい。(山形支局)
    --「記者の目:大震災「支援される気持ち」=前田洋平」、『毎日新聞』2011年12月2日(金)付。

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