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「学校再興:福島県立磐城高生が東大院教授らと白熱討論 ゆっくりでも諦めず前進」、『毎日新聞』2011年12月26日(月)付。

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学校再興:福島県立磐城高生が東大院教授らと白熱討論 ゆっくりでも諦めず前進

 東日本大震災で津波や原発事故の被害を受けた福島県いわき市にある県立磐城高校(星浩次校長)を今月6日、本田由紀・東京大大学院教授(教育社会学)が訪れた。1年生7人と意見交換した「いわき白熱教室」から見えた福島、そして日本の将来は……。【福田隆】

 ◇怒りから広がる視野 課題解決の「3原則」胸に
 本田教授は、河合塾の「『東日本大震災』復興と学び応援プロジェクト」の企画で訪問した。まず、津波被害調査をした信岡尚道・茨城大准教授(海岸工学)の説明を受けながら、市北部の津波被災地や広野町を視察し、磐城高へ。同高OBで「フクシマ論 原子力ムラはなぜ生まれたのか」の著者でもある開沼博さん(27)=東大大学院博士課程在学中=も加わり、1年生約300人に講演した後、1年生7人との討論に臨んだ。

 自宅が損壊した生徒もおり、震災を通して変わった価値観などについて語り始めた。森尾翔平君(16)は「水や食料の情報を教えてもらい改めて人との関わりが大切だと思った」。本田教授が「震災後、絆や人とのつながりが注目されているけど、そこから外れた人はどうする?」と問いかけると、少し考えた後、「居場所を無くして夜の世界でしか生きられない若者を、(学校や仕事に通う)昼の世界に連れ出してあげたい」と答えた。

 佐川奈央さん(16)は「地元は過疎で寂しかった。震災後は少しでも活性化させたい思いが強まった」。本田教授は「仕事を作っていくことが課題」と助言し、開沼さんも自らの高校時代を回想し「自分の問題と社会、政治、経済をつなげると、考えが原発問題にもつながる」と、視野を広げるよう助言した。

 「日本でなぜあの(津波が来る危険な)場所に原発を建てていたのか?」と強い口調で語ったのは、新家(しんか)杏奈さん(15)。「津波で人が死なないような技術を研究したい。専門分野間の溝を埋める人間になりたい」と話すと、信岡准教授が「まさしくそれが必要。専門が分かれると目的がずれて、人命優先を忘れがちだ」とエールを送った。

 情報の信用度に対する意見も相次いだ。児山希さん(16)は原発事故の影響について「テレビは『安全』と言うが、それは一面的でしかなく、自分がどれだけ知っているか、が大切と思った」と振り返った。

 約1時間経過したころ、本田教授が「若者として、怒りや要求はないの?」と水を向けると、場の空気は一変。教育をテーマに、活発な意見交換が始まった。

 「職業に関する専門的なことをもっと知りたいのに、なぜ大学に行かないと学べないのか。もっと高校(の専門性)と社会が密着すべきだ」。法学部への進学を考えている小松真優さん(16)がこう切り出す。新家さんも「学びたいことが学べるオーダーメードの学校が欲しい」と続いた。

 都市と地方の「教育環境格差」について。「都会にいるともっと勉強できる」という小松さんの意見に、酒井大輔君(15)が「生まれた場所である程度違うのは仕方ない」と反論。新家さんから「違いを努力で埋められないのは問題だ」との意見が出ると、山田暁理(あきみち)君(16)が「そこが政府の役割ではないか」と問題提起した。小松さんは「環境にも差があるが個人も少し大切。でも、個性ばかり強調すると、周りの個性をつぶすことになる」とも発言した。身近な教育への不満から始まった議論は、テーマが政治や公共性に広がった。

 ここで本田教授が、課題解決のための「3原則」を伝授した。「かんたんじゃない/すぐにじゃない/でもあきらめない(忘れない)」。この歴史的な苦境を乗り越えてほしい、との強い思いを込めた贈り物だ。「理想がそのまま実現できなくても、生きることをやめるわけにはいかない。ジリジリとでも進めるしかない」と締めくくった。

 星校長によると、同校生徒に犠牲者はいなかったが、20人が転校した。星校長は「生徒は震災の問題を自分たちの課題として、逃げずに考えている。本田教授の来校はいい刺激になった」。本田教授は「生徒は一度被災地を離れても、討論会で伝えたこと(3原則)を覚えていてくれるなら、放射能で汚染された土地を復活させるために、時間と経験を経て戻ってくれるだろう。そうであってほしいと思う」としている。
    --「学校再興:福島県立磐城高生が東大院教授らと白熱討論 ゆっくりでも諦めず前進」、『毎日新聞』2011年12月26日(月)付。

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