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人間の魂に欠くべからざる糧は自由である

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自由
 人間の魂に欠くべからざる糧は自由である。語の具体的な意味における自由は、選択の可能性に存する。もちろん、ここでいう可能性とは、実際的な可能性である。共同生活があるところではどこでも、共同の利益のために課せられる規律が選択を制限することは避けられない。
 しかしながら自由は、その制限の範囲が狭いか広いかにしたがって、大きくなったり小さくなったりするものではない。自由はそれ固有の十全性をもち、その十全性の諸条件は、そんな安易な尺度で測ることはできない。
 規律は、十分に合理的かつ単純なものであって、そのようにのぞみ、また中程度の注意力をそなえた人間ならだれでも、それらの規律に対応する利益と、それらの規律を課した事実上の必要とを理解できるといったものでなければならない。また規律は、外国のものとか、敵のものとかみなされない権威、それに服する人間たちのものとして愛される権威から発する規律でなければならない。さらに十分に安定し、十分に数少なく、十分に一般的であって、思惟はそれらを決定的なかたちで自己に同化し、なにか決心しようとするたびごとにそれらと衝突することがないといった規律でなければならない。
 こんなわけで、善意の人間たちの自由は、事実上は制限を受けているけれども、自己の意識においては完全な自由なのである。なぜなら、規律は彼らの存在自体と一体になってしまうために、禁じられた可能性は彼らの思惟に現われず、拒否される必要がないからである。これと同様に、嫌悪すべきもの、ないしは危険なものを食べないという習慣が教育によって植えつけられている場合には、その習慣は、正常な人間であるかぎり、食物の面における自由の制限として感じられない。制限を感じるのは子供だけである。
 善意を欠く人間たち、子供から抜け出せない人間たちは、どんな社会状態においてもけっして自由ではない。
 選択の可能性が共同の利益を損なうまでに広範囲におよぶ場合、人間は自由にたいして歓びを感じない。なぜなら、彼らは、無責任、幼稚な言動、無関心といった避難場所、つまり、倦怠しか見出すことのできない避難場所に授けを求めるか、さもなければ、他人を侵害するのではないかという危懼によって、ことあるごとに責任の重圧に押しひしがれてしまうか、このどちらかの状態に追い込まれてしまうからである。このような場合、人間は、おのれが自由を所有すると誤認し、しかもその自由を享受していないと感じる結果、ついには、自由は善ではないと考えるにいたるのである。
    --ヴェイユ(山崎庸一郎訳)「根をもつこと」、『シモーヌ・ヴェイユ著作集 V』春秋社、1967年、31-32頁。

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「東京都青少年の健全な育成に関する条例」が改正されてからほぼ一年。

震災を挟んで多難にみちた時間の経過であったと思いますが、振り返ってみると、ますます「人間の自由」を損なう時代へシフトしてきたような気がするのは僕一人ではないだろうと思います。加えてPC監視法も成立し、ますます……という情況。

気がつけば、ここの人間の奮闘や連帯のヒューマン・パワーが発揮されたかと思うと、ここの人間の息づかいを無視して…そしてついでに言えば、震災下での連帯や共助は日本人同士だけではなかったし、外国人と日本人、外国人同士と様々なパターンがあったにもかかわらずご丁寧にその辺は無視したりしてね…、いきなり上から目線で「日本人はすごい」というグルーピングがはじまったり、「絆」という閂でいきなり締め始めるとかw

すでに国民国家という幻想が揺らぎ始めているにもかからず最後の抵抗を強烈にしはじめたなぁということを、振り返ってみれば痛感した道のりだったかと思います。

自由を制限したいという人間は確かに存在するでしょう。
しかし「自由を制限したい」と欲求するあなた自身の自由も「制限」されるというトリックはお忘れなくという次第です。

現実には、自由という「権利の上に眠る者」は存在するし、それはそれで個別対処していくしかないし、自由を「空気」のように享受している人間は、その意味を内実化たらしめる努力を放擲してはならない。

歴史を振り返れば「無責任」「幼稚な言動」「無関心といった避難所」が人間そのものを結果としては阻害する要因として機能してきたし、権威・権力というものはそこを突破口にして制限へとシフトする。

気が付いたら遅かった……などとなりませぬように、「醒めている」しかありませんな。

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