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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 貧困対策、本格始動の年に 湯浅誠」、『毎日新聞』2012年1月20日(金)付。

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くらしの明日 私の社会保障論 貧困対策、本格始動の年に
湯浅誠 反貧困ネットワーク事務局長

日本型福祉社会の見直し

 2012年は日本の貧困対策が大きく動く年になるかもしれない。
 日本では、貧困の存在は高度経済成長以降、長く忘れ去られてきたが、90年代後半以降の少子高齢化の進行、低所得化の進行、非正規雇用の拡大、教育格差の拡大、生活保護受給者の増大は、「貧困などない」と言い張り続けることを困難にした。男性正社員の片働きで家族を扶養するという「日本型雇用システム」が崩れ、セットになっていた「日本型福祉社会」モデルはカバーできない領域が増大した。
 団塊の世代が大量に高齢化する一方、生産年齢人口は急速に減り続け、しかも資力の乏しいワーキングプアが増大し続け、次世代の子どもたちは減り続けている。このままでは社会の持続可能性がないことに、多くの人たちが気づくに至っている。
 政府も、税と社会保障の一体改革で「貧困・格差対策」を優先項目の一つに位置づけ、社会防衛に乗り出し始めた。構成労働者に社会的困窮者自立支援室を設け、貧困指標の見直しに着手し、今秋までに「生活支援戦略」を立てて中期プランを策定する予定だ。その中には生活保護の見直しも入っている。また、懸案の消費税増税に際しては、低所得者の負感増を抑える逆進対策として、給付つき税額控除の導入と、導入までの過渡的施策を検討している。
 半世紀近く続いた「日本型福祉社会」のモデルの本格的見直しがスケジュールに乗り始めた。個々の施策がどのように新設・改変され、それぞれがどのように組み合わされるかによって結論は大きく変わるだろう。まだ、良くなるとも悪くなるとも言い切れない。総選挙がささやかれる政治状況にも左右されるだろう。

私たちはそれに対して、「お手並み拝見」と評論家然としていることも、「どうせ悪くなる」と無為にやり過ごすことも、できないし、すべきでもない。かかっているのは私たちの生活だからだ。積極的に事態を伝え、意見を出していく必要がある。しかし実際には、多くの人たちは仕事と生活に追われ、丁寧に議論を追う余裕も、自分の意見をじっくりと練り上げる余裕もない。そうした状況の中では、威勢のいいワンフレーズのキャッチコピーを編み出した人の勝ち、という不毛な結果い終わりかねない。年に一週間くらい、一人一人が「日本のこれから」をじっくり検討するスペシャルウィークを持てないものだろうか。
 ……年の初めだからか、そんなことを夢想した。

日本型福祉社会 企業の正規雇用や安定した家庭の存在を前提に、所得の保障や福利厚生の提供、子どもの育成・教育、高齢者の介護などを企業や家族が担ってきた社会のこと。国は高齢者に向けて年金などの制度を整える以外は、生活保護といった最終的なセーフティーネットを提供するだけでよかった。長引く不景気や少子化、独身者の増加などで、その根幹が揺らいでいる。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 貧困対策、本格始動の年に 湯浅誠」、『毎日新聞』2012年1月20日(金)付。

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