拙文「書評 『一般意志2.0』東浩紀著」、『第三文明』2012年3月、第三文明社、92頁。
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書評 『一般意志2.0』東浩紀著
熟議民主主義を補完する「アップデート」という試み
「民主主義」という言葉を耳にすると、普遍的な理念だとは思うものの、その現状に軽蔑と失笑を禁じ得ないのは評者だけではないだろう。しかし「民主主義オワタ(終わった)」と断定する早計さを、本書は丁寧に気付かせてくれる。
著者はルソーの「一般意志」を手がかりに民主主義の更新を説く。一般意志とは個々人の意志が全体の意志と一致した状態のことだ。これまでは単なる理念に過ぎなかったものだが、ウェブ社会の技術革新はその実現を予感させている。ここに一つのヒントがある。
民主主義は、選挙でアクセスし、熟議で合意形成を目指すシステムと理解されてきた。しかし現代社会は、選挙や熟議だけでは処理できないほど複雑になっている。声が届かないこと、そして無視されることに僕たちは苛立(いらだ)ってしまう。だとすれば、その限界を踏まえたうえで更新・補完していくのも一つの戦略だろう。
たとえば、政策審議をネット中継し、見た人の意見を政治家たちにリアルタイムで可視化した場合、密室の熟議はより開かれたものにならざるを得なくなる。これまで集約されなかった意志や行動履歴といったものがデータベース化されて利用できるようになれば、当然それは政治への新しい接続を開くことになるだろう。
総記録社会の「一般意志とはデータベース」として、それを利用することなのだ。
著者のラジカルな未来予想図は、一見夢想的に見えるが極めて現実的な内容だ。政局報道に食傷気味の人にぜひ読んで欲しい。著者が語る「夢」は間違いなく手あかにまみれた「民主主義」「政治」「政府」といった窮屈な「1・0」を柔軟な「2・0」にアップデートしてくれるからだ。まずはここからだ。(神学研究者・氏家法雄)
--「書評 『一般意志2.0』東浩紀著」、『第三文明』2012年3月、第三文明社、92頁。
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手前味噌で恐縮ですが、久しぶりに紀要とかじゃないものに一本原稿を書いたので紹介しておきます。
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