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覚え書:「個人識別番号利用法案:不明確な『公益』 監視社会化懸念」、『毎日新聞』2012年3月10日(土)付。

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個人識別番号利用法案:不明確な「公益」 監視社会化懸念

 外国人を含め住民票を有する全員に割り当てた個人番号を使って、行政機関や企業が保有する個人情報を利用するための個人識別番号利用法案(マイナンバー法案)が国会に提出された。15年1月の導入を目指す番号は、将来的には民間利用にも道を開く事実上の国民背番号だ。法案では捜査機関への情報提供も認めるなど監視社会化への懸念も広がる。どのような内容なのか整理した。【臺宏士】

 ●所得把握は不完全?

 個人番号法案は野田政権が進める税と社会保障の一体改革関連法案の一つだ。社会保障と税分野で共通の番号を使うことで一人一人のより正確な所得把握を可能にしようとする狙いだ。

 内閣官房で社会保障改革を担当する向井治紀・内閣審議官によると個人番号は、11桁の住民票コードより多い桁数を予定し、(1)全員への割り当て(2)他の人と重複しない(3)官民での広範囲な流通(4)長期間の利用--が特徴。地方自治体が発行する住民票コードと異なり、国が割り当てを自治体に依頼する。

 現行の住民基本台帳カードは廃止。番号は新たに発行される「個人番号カード」に記載される。カードの発行は本人の申請が原則だが、行政手続きの際に本人確認に使うなど全員の所持を想定している。

 法案では年金、保険、公衆衛生、住宅、学校・教育関係など93件の事務で番号を含む個人情報の利用を可能にした。

 住民基本台帳ネットワークシステムを運営する地方自治情報センターを改組し、総務省と内閣府が共管する地方公共団体情報システム機構が担当。導入に向けて政府は、情報提供ネットワークシステム構築やシステム改修、「個人番号カード」の発行費用などで総計数千億円規模を見込んでおり、住基ネットの約400億円をはるかにしのぐ。

 例えば、税務当局は、ある人の所得について同じ個人番号で管理された支払い調書を効率的に名寄せして課税できたり、生活保護など所得に応じた社会保障の給付が可能になるというのが導入に向けた、うたい文句だ。ただし、政府は「番号が導入されたからといって所得把握が完全にできるわけではない」(向井審議官)と予防線を張る。

 ●捜査機関は例外扱い

 法案は2月14日に閣議決定され、全容が明らかになった。注目されたのは、政府が昨年6月に公表した「社会保障・税番号大綱」で、言及されていなかった捜査機関への情報提供が例外扱いされたことだ。法案の17条は番号など個人情報の提供を禁止した。その一方で、例外として捜査機関や国会、裁判所、税務当局などに加え、「その他政令で定める公益上の必要」(11号)を挙げている。

 今月6日に東京・永田町で行われた市民グループ主催の集会では、清水雅彦・日本体育大准教授(憲法)は「刑事事件の捜査だけでなく、政令事項にしていくことで国会をバイパスし、内閣だけで一方的にできるようになってしまう。公益上の必要というあいまいな表現で、個人情報が使われる余地が拡大する可能性がある」と指摘した。

 個人番号や個人情報が適切に取り扱われているかについて、公正取引委員会のように政府から独立性の高い「個人番号情報保護委員会」が監督することになる。委員長1人と6人の委員(うち3人は非常勤)で構成され、行政機関などに対して、指導・助言や勧告・命令、さらに立ち入り検査権を持っている。

 しかし、11号に該当する場合は適用対象から除外(48条)された。法案は行政機関に対して、個人情報が記載されたファイルを保有する場合に、事前に漏えいの危険性や影響の評価などファイルの取り扱いに関する評価書の作成と委員会による承認を求めているが(14、15条)、国会や裁判所については対象外だ。

 また、自分の個人情報をどの機関が利用したのかを「システム機構」が運営する「マイポータル」(16年1月運用開始予定)で確認できる仕組みを導入する。自己情報へのアクセス権を保障しようという狙いだが、11号は対象外だ。

 ●匿名社会化

 個人情報保護法の全面施行(05年4月)に伴って、「保護」を口実にした情報・不祥事隠しや、地域で要援護者リスト作りが進まないなど必要な個人情報の共有が滞る「過剰反応」が相次ぎ、匿名社会化が大きな問題となった。

 法案では施行後5年の見直しを明記した。政府は▽税▽社会保障▽防災の3分野以外での行政事務や、民間分野での利用を幅広く認めていく方針だ。

 法案は、番号を含む個人情報を正当な理由なく提供した行為について4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金を科す内容だ(62条)。行政機関個人情報保護法では、2年以下の懲役または100万円以下の罰金。個人情報保護法では民間事業者は監督大臣の命令違反に対し、6月以下の懲役または30万円以下の罰金とされており、現行法より重罰化した。

 内閣官房の担当者によると、「正当な理由」には、個人情報保護法で適用が除外された、報道や学術、政治分野などへの提供行為が含まれるかについて「判断する材料」との解釈にとどまっている。

 消費者委員会は、同法改正も視野に有識者による専門調査会を設置し検討してきたが結局、昨年8月に出した結論は「引き続き検討」と先送りされた。問題を放置したままの番号法の制定は、内部告発の萎縮や、匿名社会化をいっそう進める恐れがある。

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 ◆関連条文

 ◇第17条11号
 次の場合を除き、提供してはならない。国会法、訴訟手続きその他裁判所における手続き、刑事事件の捜査、その他政令で定める公益上の必要があるとき(要旨)

 ◇第48条
 前3条(委員会による助言、勧告・命令、立ち入り検査)の規定は17条11号に該当する場合は適用しない(同)
    --「個人識別番号利用法案:不明確な『公益』 監視社会化懸念」、『毎日新聞』2012年3月10日(土)付。

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http://mainichi.jp/select/seiji/archive/news/2012/03/10/20120310ddm012010128000c.html


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