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機械は人間を生かすために機能するのではない。機械に奉仕させるためにやむなく人間を養うにすぎない

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 科学者が科学の力をたのむのは、思考のさらなる明晰さに達するためではなく、既成の科学に附加されうる成果を発見したいと希っているからだ。機械は人間を生かすために機能するのではない。機械に奉仕させるためにやむなく人間を養うにすぎない。金銭が生産物の交換に適した手順を供給するではなく、商品の流通こそが金銭を循環させる手段なのだ。最後に、組織とは共同行動を促す手段ではなく、いかなる集団であるにせよ、集団の行動は組織強化の手段でしかない。同種の転倒の例は、認識の領域における語・代数学の公式、経済の領域における貨幣・信用貸(クレジット)の象徴といった種々の記号が、現代の機能をはたす一方で、現実の事物のほうは影にすぎなくなる点にみられる。まさしく、学者とその影が役割を交換する、あのアンデルセンの物語のように。なぜなら、記号は社会的な関係性にかかわる問題だが、現実の知覚は個人にかかわる事象だからだ。
 集団を利するためにおこなわれる個人の権利の剥奪は全面的ではなく、そもそも全面的たりえない。
    --ヴェイユ(冨原眞弓訳)『自由と社会的抑圧』岩波文庫、2005年、124頁。

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自分を含めて、皆、なんらかの「正義」……それが果たしてそれに値するのかという議論はひとまず横に置きますが……に準拠して行動しようと心がけている。

けれども、実際のその行動においては、なんらかの「正義」というよりも、「正義」という言葉に照らし合わせて勘案してみた場合、実際のところ、「現実の事物のほうは影にすぎなくなる」ような転倒が起こっているのか知れない。

「機械は人間を生かすために機能するのではない。機械に奉仕させるためにやむなく人間を養うにすぎない」。

「金銭が生産物の交換に適した手順を供給するではなく、商品の流通こそが金銭を循環させる手段なのだ」。

「最後に、組織とは共同行動を促す手段ではなく、いかなる集団であるにせよ、集団の行動は組織強化の手段でしかない」。

このヴェイユ(Simone Weil,1909-1943)の告発は正鵠を得すぎている。


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