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「宗教アレルギーから脱していくためのまじめな学習」の必要性

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 もしかしたら、日本人には、宗教が非近代的だ、という観念があるのかもしれない。だからそれを知ることは、自分が古くさい考え方に左右されることになるまいかという恐れがあるのかもしれない。たしかにヨーロッパの民衆は、キリスト教会のなかでも布教に熱心だったカトリックの権力から離れて(信仰からは離れていないが)、近代技術を手に入れた。そしてその力を移入して近代化した日本人は、宗教の価値を世界で一番否定する理由を、そんな歴史からもつのかもしれない。つまり生半可な知識で日本人は、ヨーロッパが政治権力を教会から引き離したことを見て、信仰を生活の全般から引き離すことが近代的であるのだと、勘違いしているのかもしれない(たしかにヨーロッパでも、現代では信仰から離れてしまった人が多いのだが)。しかし、技術の力で経済力をつけた日本は、今や精神の空洞化に悩んでいる。カルト的な宗教はますます日本人の宗教不信を増している。このままでは出口の見えない状態となってしまうだろう。
 つまりこのあたりで日本人は、宗教アレルギーから脱していくためのまじめな学習を必要としているのではないか。
    --八木雄二『中世哲学への招待』平凡社新書、2000年、12-13頁。

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相変わらず、ワイドショーとゴシップ雑誌は、芸能人と占い師の追跡ばかりしている。

両者の関係は憶測に基づくコメントばかり。

家賃の未払いは当事者同士の問題だから、詳細に報道される必然性はないし、「知る権利」を楯に“覗き見”することは権利の濫用も甚だしいところだろう。

こうした一連の報道をみていると虫唾が走るのは僕一人ではないと思う。

しかし、それよりも問題なのは、日本人自体の宗教に対する「向き合い方」そして、負の傾向を助長してしまうメディアのスタンツなんだろうと思う。

メディアは、「占い師」のマインド・コントロールや洗脳の「深刻さ!」を訳知り顔の専門家に語らせる一方で、朝と夕方の情報番組で、(朝の場合は)「その日」、そして(夕方の場合は)「翌日」の占い結果を紹介している。

この光景が象徴的だ。

宗教に関心がないことと無知であることはイコールではないはず。
関心がない、無宗教であることは、その人の「ことがら」だからそれでいいと思う。
しかし、宗教に対する基礎的な知識を欠いたまま「関心である」とか「無宗教である」ことを自認することは筋がちがうと思う。

よくわからないけれども、テキトーに「マインドコントロールだ」「洗脳だ」というレッテル張りで、対象に対する深い省察もなく、片づけてしまう「根性」、そしてそう動員してしまうメディアこそ問題だろう。

「無知」を「無関心」と錯覚させ、宗教を全て「キワモノ」扱いとしてそれ以上考察しないこと……まずは、この現状こそ洗脳でありマインドコントロールであることを理解するところからはじめた方がよいのではないか?


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