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書評:テリー・イーグルトン(大橋洋一)『テロリズム 聖なる恐怖』岩波書店、2011年。

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人間の本質に内在する聖なるものの二面性に注目

テリー・イーグルトン(大橋洋一)『テロリズム 聖なる恐怖』岩波書店、2011年。

「いかなる支配形式も理性形式も、みずからの核心にある非理性の要素にしかるべき敬意を払う」。

2001年の9・11以降、テロの連鎖は止むことはない。本書はそのテロリズムの歴史的経緯を説明するものでもなければ、現代政治学の文脈でその連関を読み解くものでもない。原題は「聖なる恐怖」。人間の本質に内在する聖なるものの二面性に注目するスリリングな一冊だ。

創造と破壊、そして理性と狂気、自由と抑圧、自愛と自死、その具体的現象として文明と野蛮……。精神と肉体が分かちがたく結びついているように、こうした相反する性向はともに人間に潜在する。著者はギリシア悲劇から近代文学、さらにはフロイトの無意識など豊富な事例を取り上げながら、この人類の宿命ともいうべき二律背反を批評する。

決して読みやすい本ではないし、表題に掲げられた「テロリズム」が何なのか明瞭に分かるわけでもない。そして読後に残るのは圧倒的なまでの絶望感だ。戦慄する深淵に対して、ひとは蓋を使用とするのが常だろう。しかし闇をまじまじと見続けることも時には必要であろう。

明るくほほえむだけが人間のすべてではない。人間を特定の側面からのみ注目してしまうことが落とし穴だろうし、「裏切られたー」と嘆いてしまう原因にもなってしまう。理性の側面も非理性の側面も充全に捉えることが必要だろう。

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