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グローバルリズムか伝統への回帰か……そっと二元論を退ける「中国化する日本」

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書評: 與那覇潤『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』文藝春秋、2011年。


 今日のグローバル社会の原型は宋代の中国で誕生した。そしてそのグローバリズムの挑戦への対応が日本という国の足跡ではなかったのか--。そう大胆に描写する本書の基本図式には何ら異論はない。
 宋代に誕生したシステムとは、1)皇帝を支える官僚、2)貨幣経済の浸透と都市の形成がその基盤にある。。官僚は科挙によって公平に選ばれ、貨幣経済の拡大は貴族による荘園経営の崩壊を招く。ともに地域や職能による紐帯を弱め、政治も経済も個人単位で動いていく。要するにグローバル社会の到来は今から千年前の中国にその嚆矢をみることができるという「歴史観」だ。
 では、その対極にあるのはどういう社会か--。著者によれば、江戸時代に完成した日本型社会がそれに当たる。農村を基本単位とする地位共同体の結束を基礎的モデルとして、何らかの集団に帰属し、強い束縛を受ける変わりに、衣食住を保障するというというのがその特色だ。例えば新卒一括採用や終身雇用に代表される戦後の企業社会はその現代版ともいえよう。
 そして中国化か江戸時代化かがつねに日本史における対立軸であったと著者は指摘する。一見大胆な仮説に「見える」が、安直な「ためにする」議論になっていないことには驚くばかり。実はプロの歴史学者が最新の研究にもとづく実証的研究となっていながら、読みやすくまとめていることに二度驚く。
 ただし限界がないわけでもない。これは文明論に共通した落とし穴かもしれないが、人間の「営み」という息吹が伝わりにくいということだ。勿論文明論だから必要ないと言い切ることも可能だし、無い物ねだりの感もある。ただ歴史とはとどのつまり「人間」の「足跡」に他ならないから、単なる類型化でまとめ上げてしまうこともできないのも事実だ。勿論これは過剰な注文といわれてしまえばそれまでだが、著者の新著にこの点は期待したいところである。
 ただ本書が提示した図式は、あれか・これか……すなわち現状の破壊かそれとも復古かという従来のものの見方の陥穽を撃つと共にその両方を学ぶことでオルターナティブを立ち上げる必要があるのでは、とそっと肩を叩いてくれる。

※すいません、ブクログの書評の再掲です、ちょい今日は時間がないのでorz


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