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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 検討始まった生活支援戦略 湯浅誠」、『毎日新聞』2012年5月11日(金)付。

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くらしの明日 私の社会保障論 検討始まった生活支援戦略
湯浅誠 半貧困ネットワーク事務局長

困窮者の暮らし丸ごと支える
 4月9日の国家戦略会議に、厚生労働省は、「『生活支援戦略(仮称)』の推進について」と題するペーパーを提出した。①生活困窮・孤立舎の早期把握②ステージに応じた伴走型支援の実施③民間との協働による支援④多様な就労機会の確保⑤債務整理や家計の再建支援⑥安定した居住の場の確保⑦中・高生に対する支援の強化--という七つの柱(機能)を一体的に展開する政策体系を、7年計画で構築しようとするものだ。
 従来、現役世代の生活は「企業と家族が支える」と想定され、社会保障制度は主に高齢・障害者向けにしか整備されてこなかった。日本は「中福祉」か「低福祉」かという議論があるが、現役世代については間違いなく「低福祉」であり、それで問題ないとされてきた。
 しかし90年代以降、非正規雇用の拡大に代表される社会構造の変化は、企業と家族の生活保障能力を弱め、生活困窮に至る現役世代を拡大させた。現役世代の生活保護受給者が増えているのはその結果である。改善のためには、生活保護以外のセーフティーネットの強化が必要であり、それが今回、生活支援戦略として提示された。
 雇用の劣化や雇用保険の不十分さなどすべての帰結を、生活支援戦略で引き受けきれるわけではない。七つの機能の中でも、住宅問題や子どもの貧困(貧困の連鎖)の問題はとてつもなく大きい。現役世代を含むすべての人々に「居場所」と「役割」を提示できる包摂型社会の構築に向けた作業は、始まったばかりだ。
 にじり寄るような積み重ねの上にしか、本当の変化は訪れない。「根本的な変化」を一個人の頭の中で思い描くことはできる。しかし、社会は多くの諸個人が集まって構成されている。その事実を飛び越すことは、誰にもできない。


 いま、既存の社会保障制度の対象とならない人たちは膨大な数に達しつつある。それが結婚に踏み切れない男女、子どもを産み育てることに不安を感じる夫婦を増やし、社会の持続可能性を取り崩している。
 私自身、生活困窮者らの雇用や住居、暮らしを総合的に支援する「パーソナル・サポート・サービス」のモデル事業や、仕事、生活、性や心の悩み、自殺念慮など、あらゆる相談の窓口を一本化した「よりそいホットライン」で、既存の制度に当てはまらない人たちに対する包括的な支援に着手した経緯がある。生活支援戦略は、その次の展開、いわば第2のステップを刻む試みだ。
 大勢の諸個人で構成される社会では、当然ながら、このような流れに抗する人たちもいる。復古的な家族主義を称揚する動きも強まっている。ここでも社会の選択が問われている。

ことば 生活に困窮する現役世代
生活保護受給世帯のうち、母子世帯や傷病・障害者世帯をのぞいた現役世代(15~64歳)が多く含まれる「その他の世帯」の割合は、00年度の7・4%から10年度は16・1%と、10年で倍以上に増加した。賃金が低く不安定な非正規雇用労働者の割合も、00年は26・0%だったが、10年は34・3%に増えている。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 検討始まった生活支援戦略 湯浅誠」、『毎日新聞』2012年5月11日(金)付。

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