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書評:鹿島茂『渋沢栄一〈1〉算盤篇』、『渋沢栄一〈2〉論語篇』文藝春秋、2011年。

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鹿島茂『渋沢栄一〈1〉算盤篇』、『渋沢栄一〈2〉論語篇』文藝春秋、2011年。

論語に基礎を置く『算盤』主義……明治の精神を具現する渋沢栄一の本格的評伝


近代日本・資本主義の父とよばれる渋沢栄一の最新の評伝を手に取ってみた。執筆が仏文学者の鹿島茂氏だから驚いたが、考えてみれば、鹿島氏は、先に『怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史』(講談社、2010年)を執筆しているから、驚くに値いしないか。

対象に対する愛情と旺盛な好奇心が本書でもいかんなく発揮されている。

本書は、渋沢の性格や経歴といった個別的な特性からその思想形成と経済社会への関わりを検討するところがひとつの特徴といってよい。上下二巻にわたり丹念に調査しており、本書で紹介された話題は実に豊富で多面的である。

新撰組の土方歳三との関係や様々な逸話が幅広く渉猟・蒐集されており、鹿島氏の面目躍如といったところだろうか。

「渋沢は、自己本位の利潤追求はかえって、自己の利益を妨げるという資本主義のパラドックスを十分に理解した上で、論語に基礎を置く『算盤』を主張しているのである」。

さて渋沢が算盤と論語の「両刀遣い」だったことは有名だが、十分知識も経験、そして関心があるにもかかわらず、投機に走らなかったのは、「論語」に説かれる道徳倫理に基づく「自制心」がセーブしたのではないかという指摘は興味深い。

合目的化していく人間の必然を絶えず相対化させて闘う、その足跡を辿ると、意外のようにみえる渋沢が宗教や道徳・倫理運動にも同じく力を注ぎ、支援した歴史にも頷くことができる。

2冊で900ページ以上。読み応えがある。


 

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