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覚え書:「今週の本棚・本と人:『旅のパウロ』 著者・佐藤研さん」、『毎日新聞』2012年06月10日(日)付。

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今週の本棚・本と人:『旅のパウロ』 著者・佐藤研さん
 (岩波書店・2625円)

 ◇伝道者の生きざまを追って−−佐藤研(さとう・みがく)さん
 イエスの刑死後、ユダヤ教世界を超えて小アジア(現在のトルコ)やギリシャへ異邦人伝道の旅を続け、『新約聖書』の「ロマ書」(ローマ人への手紙)などの膨大な書簡を残した使徒パウロ。彼なくして世界宗教としてのキリスト教は成立し得なかったとさえ言われるが、その生涯や人となりには、意外なほど明らかでない部分も多い。
 「パウロ書簡は難解で分かりにくく、一人の生きた人間の姿が見えてこない。読解だけで抽象化してしまうことに不安を感じました。足跡をたどり、その大変な距離感や肉体的、感性的な条件を追体験してリアルなパウロ像に近づきたかった」
 立教大で教鞭(きょうべん)を執る傍ら、2002年以降8回の「足跡紀行」で、コリントやエフェソを訪ねる3度の伝道旅行からローマ護送にいたる数千キロの行程を、レンタカーを駆って走破した。「荒涼とした風景の中でただ地平線を目指し、恐らくは黙々と歩き通したパウロは、やはり取り憑(つ)かれていたのだと実感しました。あきれるほどの情念(パトス)の力、破裂するような上昇のエネルギーを思い知らされた」
ユダヤ教徒のパウロは当初、イエス派を迫害するが、十字架のイエスに呼び止められ「回心」する。「パウロにはユダヤ教保守派としての自覚があった。しかし、十字架上で殺されたイエスの凄(すさ)まじい弱さを心の眼(め)で見て衝撃を受け、神が新たな一歩を踏み出し、ユダヤ教に大きな変更を与えたと確信したのでしょう。それが、ユダヤ教の枠を打ち砕いて異教徒まで救済するという、非常にラディカルな普遍性を生んだと思います」
 後にキリスト教の“守護神”となるパウロだが、彼の時代、キリスト教という宗教はまだ存在しない。「ユダヤ教に最も忠実たらんとする行為が、結局は他の道を開いていく。その律義さゆえに自分はエルサレムに戻って捕らわれる。彼の死後、ユダヤ教からキリスト教を切り離すために彼の書簡の論理が使われた。まさに歴史の皮肉ですね」
 旅の途上の無数の写真には紺青の空と海が映える。その「乾いた単純明快な強烈さ」が古(いにしえ)の伝道者の生きざまに重なるという。<文と写真・井上卓弥>
    --「今週の本棚・本と人:『旅のパウロ』 著者・佐藤研さん」、『毎日新聞』2012年06月10日(日)付。

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http://mainichi.jp/feature/news/20120610ddm015070031000c.html

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