9歳になる君へ:あんたから見てわしがキリスト教徒なら、あんたもわしから見ればユダヤ教徒と申せますからな、宗旨は違っても人情は一つなのです。
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修士 ああ、ナータンさん! 貴方がキリスト教徒だ! いや、本当のキリスト教徒だ! 第一等のキリスト教徒ですよ!
ナータン 結構な話です! あんたから見てわしがキリスト教徒なら、あんたもわしから見ればユダヤ教徒と申せますからな、宗旨は違っても人情は一つなのです。しかしわしらはいま徒らにいたわり合ってばかりもいられません。ここでなんとか手をうつことが必要です。さて、それからというのものは忽ち七倍の愛が、わしをこのたった一人の、しかもよその娘に結びつけてしまいました。わしはあの娘のうちにいるわしの七人の息子達をまたしても失うことになるのかと考えただけでも、もう死にそうな気がします。--しかし摂理がこの娘をまたわたしから手離すようにと求めるのでしたら、わしは謹んで摂理に従いましょう。
修士 いや、ますますもって立派なキリスト教徒です! 実はそのことをたったいま貴方にお勧めしようと思っていたところでした。しかし貴方の心のうちに住む善い霊は、もうそうするようにと勧めていられたのですな。
--レッシング(篠田英雄訳)『賢人ナータン』岩波文庫、1958年、166-167頁。
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今日は、我が子が9歳になった誕生日。
土曜日は仕事なので、「お祝い」ができませんので、前日に、お鮨を……廻るアレですが(涙……家族で楽しみつつ、「今日までぼくたちの子供として生まれてきてくれてありがとう」、そして「今日からまた自分自身の新しい歴史を創っていこう」と記念しつつ乾杯をさせて頂きました。
未来へ伸びゆく彼に対する責任を感じるだけでなく、本当に、ウンコみたいなわたしの子供してお生まされましてありがとうというのが正直なところです。
今年は「ケーキはいいや」っていうので宅ではなく、お鮨やさんでお祝いとなりましたが、彼がすくすくと成長するさまに、なにかが、そう、生命が輝きながら伸びていく……という事実に感動と感謝です。
さて、彼がこの世界に創造されてから、毎年のことですが、岩波文庫に収録されている本を一冊づつ贈っておりますが、9歳になったこの日は、レッシングの秀作『賢人ナータン』を寄贈しました。
たぶん、素で読んで理解できるかどうかおぼつかないところはあるのですが、明日から読み聞かせの一冊にエントリー!
概要だけは、お鮨やさんからもどって、彼に少し話したわけですが、わりと「うん、お話をくわしくしりたい!」とおしゃっていましたので、時間をかけてゆっくりと共有したいと思います。
ともあれ、以下は本とともに添えたメッセージ。
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これから、生きていくうえでは、あなたの判断を歪めかねないものの見方がたくさんでてくると思います。
たとえば、「彼はAだからBだ」と決めつけてしまうことがあるかもしれません。しかし
Aということが、その彼や彼女のすべてではありませんよね。ここに注目してほしいです。
何かを判断するうえでは、それにむきあうまえに、いろいろな情報を参考にすることは当たり前なことですし、それは必要不可欠な準備だと思います。
しかし、そこに囚われすぎて、あなたが向き合う人間を、簡単に「彼は人間ではない」などと判断しないようにしたほうが僕はいいと思う。
あなたが判断しようとする人間は、あたなと同じ人間であることを忘れないようにしたほうが、僕がいいと思う。
お父さんは、なるべく、そう心がけてきたし、これからもそうありたいと思う。人間が人間を否定しない世の中を創りゆく新しい戦友であるあなたに、僕は期待したい。
おせっかいで、無理強いで、余計なお世話の、親のエゴかもしれないけれども、そう歩んで欲しい。
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以上。
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