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書評:マッツィーニ(齋藤ゆかり訳)『人間の義務について』岩波文庫、2010年。

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イタリア建国の志士による思想書。自身で勝ち取る祖国解放の概念は、現在のナショナリズムとは対極的。相互尊重と、諸国民の特性の発揮は人類に利益をもたらさんとする力強い意志を説く。国民国家破綻の現在だから一読の価値があります。

ロマン主義的情熱と楽天的進歩観は否めない。しかし、そのリソルジメント思想には排他的な民族主義的情熱は淡く、自ら勝ち取る意義での「義務」を説く。ガンディーに影響を与え、男女平等と教育の重視、ヨーロッパ統合等、普遍志向は今なお新鮮である。

「君たちの解放は、人類という家族の統一という一つの根本原理が勝利しない限り実現できません」。マッツィーニ(齋藤ゆかり訳)『人間の義務について』岩波文庫、2010年、188頁。ゲーテを想起すべき一節ですが、ここには承認欲求としてのナショナリズムの視座はない。

イタリア国内で、発売禁止扱いとなったホール・ケイン『永遠の都』を繙きたくなったですね。


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 君たちは、みなが神の子であり、神のもとに兄弟であることの証しを立てるという厳粛な使命を担っています。その使命は、君たち自身を向上させ義務を果たすことなしには遂行できません。
 わたしは、義務がなんであるかについて、君たちに説明しようと最善を尽くしたつもりです。そして、なかでも特に本質的で重要なのが、祖国に対する義務です。祖国を築くのは、君たちの責務であり急務です。わたしが君たちに語った手段と援助を提供してくれるのは、一つになった自由な祖国をおいて他にないからです。君たちの社会的境遇の向上は、国民国家(ナツィオーネ)の政治への参加を通じてしか得られないからです。投票を抜きにして、君たちの志すもの、必要としているものを代弁してくれる真の代表者はあらわれません。国家の全市民の進歩を目指す合意に基づいた《イタリアの協定(パット・イタリアーノ》をローマで書き実行に移す人民の政府を抜きにしては、君たちの境遇の改善は望めないのです。フランスの社会主義者の例を真似て社会問題から政治を切り離し、「祖国を維持する制度がいかなるものであれ、われわれは解放を手にできる」と言ったその日から、君たちは自らの手でおのれの隷属的状態を永遠のものにしてしまうでしょう。
 本書を結ぶにあたり、わたしはもう一つ、自由な一つの祖国の建設に劣らず重要な義務を示しておきます。
 君たちの解放は、人類という家族の統一という一つの根本原理が勝利しない限り実現できません。ところが、じつに奇妙なことに、現在、人類という家族の半分は市民生活において政治的、社会的に同等とは見なされず、その統一から除外されているのです。その半分とは、わたしたちがインスピレーションや慰めを求める相手、子どもたちの初期教育にあたってくれる存在です。宗教的真理の名において自分たちの解放を求めている君たちなら、あらゆる方法であらゆる機会にこの統一の否定に抗議すべきです。
 女性の解放は、労働者の解放とつねに対をなすべき課題であり、君たちの努力を普遍的な真実として神聖化してくれることでしょう。
    --マッツィーニ(齋藤ゆかり訳)『人類の義務について』岩波文庫、2010年、187ー188頁。

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