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書評:吉田敏浩『赤紙と徴兵―105歳、最後の兵事係の証言から』彩流社、2011年。

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最後の兵事係の証言から』彩流社、読了。一兵事係が密かに残した記録から実体を精査する一冊。村役人の兵事係は赤紙配達だけでなく、対象の資質・技能も平時から調査し、死後は戦死報告も。末端の苦悩から浮かび上がる恐るべき生-権力。決して過去の話ではない。

著者が取り上げる兵事係の西邑さん(105歳で逝去)。敗戦時、軍から資料の焼却命令が出ていたにもかかわらず処分を拒否。妻にもその事実を知らせることが出系無かった。百歳を向かえ公開。その貴重な資料を著者は丁寧に読み解き、現代への教訓として伝える。

赤紙は恣意的な抽選によって「選抜」されるわけではない。軍が周到な計画(だから平時からの調査がある)のもとで発行し、人々を戦地に送った。そして兵事係は、戦死公報の伝達だけでなく葬儀なども担っていた。余儀なくされた職員の苦悩は戦後もなお続く。

いったいどのような仕組みのもとに日本の民衆は日常の生活から切り離され戦場に送りこまれたのだろうか。本書の分析は、国民と地意識社会がどのように戦争へ組み込まれ、それが「日常」へと錯覚させられていったのか、克明に浮き彫りにする。おすすめです。了。

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