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書評:岩本潤一訳著『現代カトリシズムの公共性』知泉書館、2012年。

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カトリック中央協議会に勤務する著者による訳著。カトリックの現代世界の諸問題に対する見解を幅広くまとめた一冊。全体として、第2バチカン公会議以降、カトリックは何を目指すのか、著者の主張も交え、その全体を素描する。極めて現代的な話題が多く、大変興味深い。

冒頭で生命倫理を取り扱う。カトリックの生命観を紹介した上で、ES、iPS細胞研究の倫理的問題、植物状態における栄養補給の問題が取り上げられている。次で、同性婚と同性愛の傾向をもつ人の神学校への受け入れ、叙任の問題。

中盤では、ニューエイジ、裁判員制度、平和論が取り上げられる。政治的無関心を標榜するニューエイジの傾向は全体主義を開くとの指摘は興味深い。裁判員制度に関しては聖職者の参加は否定されるが、一般信徒は公共善の立場から推奨されている。平和論は、カトリックの伝統的な戦争に対する立場と平和創出論の紹介。終盤はヨハネ・パウロ2世とベネディクト16世の生涯と著作のまとめという構成である。

カトリックは先端の自然科学や社会科学に関する情報を収集し、神学的・哲学的考察を続けてきた。その成果を一冊に纏めたという意味で非常に便利な一冊である。バチカンからの提言に冷静に耳を傾けることは、現代世界を理解する上で有益であるから、必携の一冊か。

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