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覚え書:「メインストリーム 文化とメディアの世界戦争 [著]フレデリック・マルテル [評者]渡辺靖」、『朝日新聞』2012年10月14日(日)付。

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メインストリーム 文化とメディアの世界戦争 [著]フレデリック・マルテル
[評者]渡辺靖(慶応大学教授・文化人類学)

■文化の向かう先、巨視的な視点で
 低迷を続ける政治や経済を横目に、マンガ・アニメからファッション、料理まで、日本文化はこの10年で影響力を飛躍させた。
 しかし、市場の細分化と国際競争が進むなか、10年後には日本を取り巻く文化の地政学が激変している可能性も少なくない。
 世界の文化の潮流はどこに向かっているのか。日本の強さと弱さとは。巨視的な視点から考えさせてくれる力作が現れた。
 著者はフランスの元・文化外交担当官。世界30カ国を訪れ、ボリウッドからアルジャジーラ、韓流ドラマ、Jポップまで、1200人以上の関係者を取材した。
 見えてきたのは米文化のしなやかな底力と、その覇権に挑むアジアやアラブ、中南米の国々のしたたかな世界戦略だ。
 米文化については「アメリカ人は見事な文化モデルを築き上げた」とし、たとえば大学やコミュニティー、非営利部門が果たしている役割に注目する。
 テレビから映画、演劇、音楽、出版まで、米国が文化大国となった理由を巨大資本の存在のみに帰結させるのは「うわべしか見ない人々の批判」だと一蹴する。
 また、米国が他国に文化を一方的に押し付けているとする「文化帝国主義批判」についても、文化の受容をめぐる複雑な現実を示しながら疑問を呈している。
 米国赴任中の4年間に全米35州の110都市を踏査した著者の実感だけに説得力がある。
 本書の後半は身が引き締まるエピソードの連続だ。
 たとえば、韓国は北朝鮮の世論に働きかけるべく「中国の闇市場を経由して韓国ドラマを北に送り込む迂回(うかい)戦術」をとっているという。
 中東ではサウジアラビアの放送局が同国と冷戦状態にあるイラン向けの放送をドバイ経由で活発化している。イランとのつながりが深いドバイは、欧米の国際放送局にとっても戦略的な拠点だ。
 文化に国際政治の厳しい現実が重くのしかかっている点は日本では見過ごされがちだ。
 もちろん、文化とはエンターテインメントでもある。
 著者によれば、10代前半に声や外見でスカウトし、一人何役もこなせる多目的な「アイドル」として養成するのは日本や韓国に特有の現象だという。
 Kポップを代表する「少女時代」のように、世界展開を見据えて複数の言語に対応させる近年の傾向は、グローバル化の実像や本質を読み解くうえでも含蓄深い。
 ルポルタージュとしても優れた本書に触れることで、日本の中だけでは気付くことのなかった、もう一つの「AKB白熱論争」も可能になるはずだ。
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林はる芽訳、岩波書店・3780円/Frederic Martel 67年生まれ。作家・ジャーナリスト。『超大国アメリカの文化力』でアメリカ・フランス文学賞。パリ政治学院で教えるかたわら、書評・文化情報サイト(nonfiction.fr)を主宰。ラジオでトーク番組の司会も。
    --「メインストリーム 文化とメディアの世界戦争 [著]フレデリック・マルテル [評者]渡辺靖」、『朝日新聞』2012年10月14日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2012101500005.html


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